ようやく金曜日

今週は暑さも戻ってきて、しかし梅雨らしく雨も多く、ムシムシと暑苦しい日々が続いた。
仕事の忙しさも相まって、心身ともになかなかつらい一週間だった。

在宅の仕事環境は整っているので、環境からくるストレスはないものの、リモートでの仕事には、妙な緊張感を強いられることも事実。通勤時間がない分、作業時間も長くなりがちだ。
気づかないうちに疲労が溜まりやすいようなので、注意して健康管理しないといけないな、と反省した。

夫も在宅メインで仕事をしている。
よくコロナ離婚だコロナ不和だと言われるが、我ら夫婦の場合は、かえって平和に楽しく過ごせている(と思う。夫も同じだと信じたい)。
これまでの夫婦喧嘩は、ほぼコミュニケーション不足が原因だった。それがこの在宅期間ですっかり解消された形である。

子供が学校に行っているときに、夫と二人で在宅ランチする時間も楽しい。子供が大人になって巣立った後の生活はこんな感じなのだろうか、などと思ったりもする。

とはいえ、COVID-19前の生活様式に戻れるものならやっぱり戻りたいのだが、最近の東京の感染拡大状況を見ていると、なかなかそうもいかないようだ。

このところ、日々の新規感染確認数が50人前後で推移していた東京だが、今週水曜(7/1)に67人、木曜(7/2)には107人、そして今日(7/3)には124人と激増した。

6月初めに、北大の西浦先生が、COVID-19流行前の生活に戻せば、7月中に東京都内の感染者数が1日100人以上になると予測されていた*1とおりになってしまった。
西浦先生は「居酒屋や接待を伴う飲食店、医療機関、福祉施設などで人との接触を30~50%減らせば、感染者数は低い水準を保てる」とおっしゃっていたが、そこまで接触を減らすことができなかったのだろう。

この予測については、当時、私はこんなことを書いていた:

「低い水準」がどの程度なのか(たとえば、1日あたり10~20人程度が新規に感染している今の状態は「低い水準」と評価できるのか)はわからないが、近距離で唾液の飛沫を交換し合うような接触環境さえ避ければ、ある程度の社会経済活動の拡大はOKということなのだろうと理解している。

2週間 - 科学と生活のイーハトーヴ

「夜の街」の危険性ばかりが喧伝されるが、会食に伴う感染の広がりもあるようだし、近距離で唾液の飛沫を交換し合うような接触環境を皆が十分に避けることは、やはりなかなか難しかったようだ。

これまで、感染拡大の収束に外出自粛や休業要請の効果はなかったといった説が一部で支持されていたりもしたが*2、こういった説の提唱者は、この東京での感染再拡大をどう解釈するつもりなのだろう、と半ば怒りと共に疑問に思わざるを得ない。

さて、この急激な感染再拡大を受けた議論は、ともすれば、再びの緊急事態宣言が必要か否か、という方向に向かいがちである。
いまさら厳しい行動制限状態に戻れるものか、経済はどうする、いや放っておいてアメリカのように感染が拡大したら元も子もないではないか、と堂々巡りの議論が、日々SNSでも繰り返されている。

COVID-19問題を理解するにあたっては、私は当初からずっと、国の専門家会議が示す状況分析・提言を頼りにしてきた。
今回、東京での感染再拡大に際して、もう一度これまでの状況分析・提言を見直してみると、緊急事態宣言の再指定等についても、しっかり考え方が示されているのである。

具体的には、5月14日の状況分析・提言を見てほしい*3

新型インフルエンザ等特措法に基づく緊急事態措置については、国民生活に多大なる影響を及ぼすものである。緊急事態措置が必要となるような感染の拡大は可能な限り、避けるべきものであり、(2)の感染状況等に対するモニタリングを徹底し、感染拡大の予兆がみられる場合には、速やかに法第 24 条第 9 項に基づく協力の要請(施設の使用やイベントの実施制限や感染対策への協力依頼等)など必要な対応を講じることが求められる。

として、緊急事態措置をとる前に、まず速やかな協力要請といった形で対応する案が示されている。
その上で、一定の状況に該当すると総合的に判断されるような場合には、国は、速やかに、緊急事態措置を実施すべき区域として指定を行う必要があるとしている。

東京都の対応も、少なくとも形式的には、この状況分析・提言を参考にしているものと思われる。

たとえば、7/2の小池知事の会見*4で、「夜の街 要注意」というキャッチフレーズと共に、夜の街や夜の繁華街への外出を控えてほしいという要請がなされたのは、緊急事態措置に先立つ協力要請等の「必要な対応」だということなのだと思われる。

また、同会見でも説明された新たなモニタリング項目の二つの柱、「感染の状況」と「医療提供体制」についても、上記の状況分析・提言で示されている緊急事態措置を実施するための状況、「感染の状況」と「医療の状況」を、東京都独自に設定したものだといえそうだ。

問題は、この対応が、感染拡大防止にどれくらい実効性のあるものなのか、ということである。
国の専門家会議による状況分析・提言をなぞった形になっているとしても、その具体的な中身が、状況分析・提言の本質とかけ離れていては何の意味もない。

もはや経路不明感染者もかなりの数にのぼっている今、夜の街や夜の繁華街への外出を控えてほしいというような要請は、夜の街にスティグマを与える以上の意味がどれほどあるものなのか。
そして、数値基準のない新たなモニタリング体制で、どれほど客観的かつ速やかな感染拡大防止対応ができるものなのか。

医療体制に余裕があるから/若者の感染者が多いから、経済活動との兼ね合いで、もう少し感染者数が増えてもかまわない、という考え方は理解できる。
しかし、病床を確保し続けなければならない(しかも確保すべき病床数を増やす要請もなされている)病院に負担を強いて大丈夫なのか。若者の感染者数をどんどん増やすことで、高齢者や基礎疾患を有する方々の感染機会を増やして大丈夫なのか。
そして、往来を制限しないことで、東京以外の地域に感染を広げるままで大丈夫なのか。

前回の緊急事態宣言に至ったパンデミックでは、外国からの帰国者からの感染が「まるで焼夷弾」のように各地で広がっていったとされている*5
今、東京からの感染が再びその「焼夷弾」となる危険性はないのだろうか。

7/2の都知事会見では、国立国際医療研究センター国際感染症センター長の大曲先生が、このような試算を示されていた:

7月1日(水曜日)時点での新規の陽性者の方における接触歴が不明の方の増加の数なんですけれども、27.1人で増加比が158%でありました。これは先ほど知事がお触れになられましたが、この状況で変化なく増えていきますと、実際4週間後には、リンクの追えない新規の陽性の方が1日当たり6倍に増えます。具体的に言うと160人。それが10日続けば合計1600人の新入院患者さんが生じるわけです。そこをどうするかという話が出てきますし、さらに4週間同じ状況が続くと、元々から計算すると40倍になるというところです。これはかなりの数ですので、どういう状況かということはお伝えできるのかと思っています。

なぜこんな婉曲な表現になっているのかはわからないが(大人の事情があるのだろうが)、「この状況で変化なく」ではダメだということはよくわかる。

東京都は、実効性のある新しい手を打つべきときではないのか。