子供たちを科学沼に誘い込めるかもしれないマンガとか本とか

アニメ『はたらく細胞』が大人気ですね。

実はここ数年、『はたらく細胞』に限らず、子供たちが読んでも楽しめるような、科学を題材にしたマンガや本が豊作なのです。

この5年以内くらいに出版/連載開始されたものの中から、いくつかピックアップしてみました。基準は、
・うちの子(現在小6)に評判がよく、
・私が見てもおもしろいぞ、許せるぞ、と思ったもの
です。

お子さんたちを科学沼に誘い込む一助となれば嬉しいです。*1

マンガたち

『決してマネしないでください。』(蛇蔵)

 モーニング連載時から、うちの子がおそらく一番好きだったマンガ。
 とある大学の研究室に、一癖も二癖もある研究者や非研究者がわらわら集まっては、目先の話題をネタに実験したり、恋をしたり、過去の科学者たちについて語り合ったりしています。

 「工科医大」が舞台なので、物理、化学、生物(医学)、工学と、カバーされている分野の幅が広いのが魅力です。
 全3巻とコンパクトですが、いろんな現象や理論、そして科学者エピソードがぎっしり詰まっていてお買い得。

 巻末の「是非ともマネしてみてください。」コーナーには、自由研究のネタになりそうな実験もたくさん紹介されています。

『ハルロック』(西餅)

 こちらもモーニング発。「女子大生×電子工作」がテーマです。
 ドライバーを持たせると何でも分解してしまう女子大生・はるちゃんが、生きる道をマイペースに探りながら、モノを作ったり壊したり作ったりしていくマンガ。

 はるちゃんに分解されたいと思っている幼なじみ・六くんとか、電子工作にとても詳しい小学生・うに先輩とか、おならの音を自在に操れる少女とか、登場人物が斜め上の次元の裂け目から出てくる感じなのが、私の好み。

 科学というよりはモノづくりがメインですが、仕組みや発明が好きな方にはたまらないはず。
 主人公であるはるちゃんの成長にもキュンとします。

『はたらく細胞』(清水 茜)

 言わずと知れた、超人気・細胞擬人化マンガ。
 免疫の仕組みなどという、一番ややこしいところを題材にしてよくぞここまで……と感心しました。
 
 なお、『はたらく細胞』にはスピンオフがいくつかありますが、その中では『はたらく細胞BLACK』がおすすめです(これはちょっと大人向けです)。

『Dr. STONE』(稲垣 理一郎・Boichi)

 週刊少年ジャンプで、ただいま大人気連載中。
 これについては、1年ほど前に、紹介記事を書いていました。
blog.ihatovo.com

 人類がすべて石化して、数千年経った後の荒廃した世界に、石化を解いてよみがえった少年たちが、科学の力で自分たちの国を築いていきます。
 現象や仕組みのおもしろさ、ものづくりと仲間たちとの協力と、それを利用したバトルのワクワク感の全部入り。
 マインクラフトやDASH島が好きな子供は、絶対好きなやつです。

『へんなものみっけ!』(早良 朋)

 博物館のバックヤードとフィールドワークと、それを担っているちょっとヘンな研究者たちの生態をひたすら観察できるマンガ。
 生き物を観察・収集・管理するという、地味だと思われがちなお仕事の魅力が伝わってきます。
 もちろん、生き物自体のおもしろさも。

 「へんなもの」は「へん」だから興味を引かれるわけですが、それをずっと観察していると、一般的な意味での「へん」とは思えなくなってきて、それでもやっぱりおもしろいのですよね。ふしぎですね。

本たち

『アラマタ生物事典』(荒俣 宏)

 2011年発行なので、この記事でご紹介する本の中ではやや古いのですが、素晴らしいのでピックアップ。

 どれくらい素晴らしいかというと、著者の荒俣さんご自身が

でも、この本はちがいます。「生きものはありがたい」と心の底から思いしらされる本です。

 と断言してしまうくらい。

 現代の熊楠とでもお呼びすべき荒俣宏さんが、「本草学」の精神からさまざまな生き物を説き明かしています。
 微生物から植物、動物まで、よくもこれだけいろいろな生き物を人間は研究して、そして医学や工学へと貪欲に応用してきたものだと感嘆させられます。

 基本的に1種類の生き物に1ページが割かれているのですが、最後に、関連する他の生き物へのリンクが張られているのも、この本のいいところです。
 ただ「おもしろかった」より一歩先に、自分なりの考えを広げることができるはず。

『アリエナイ理科ノ大事典』(薬理凶室)

 『Dr. Stone』の科学監修担当「くられ」さん率いる秘密結社・薬理凶室。
 その薬理凶室の皆さんが贈るマッドサイエンスの伝導書……らしいです(伝道書ではない)。

 生物・化学・物理・工作、と多岐にわたって、マッドな知識と実験が繰り広げられています。
 「ドクウツギの毒を抽出」「フルスクラッチでサルファ剤」「消火器ロケットの製作と燃焼実験」などなど。

 最強危険生物とかのワードにしびれる子供たちにはたまらないと思いますが、題材と表現がやや過激なので、お子さまに紹介する際は、ご家族の方がまず目を通してからの方がいいかもしれません。

『ほぼ命がけサメ図鑑』(沼口 麻子)

 世界でただ1人の「シャークジャーナリスト」沼口麻子さんが、これまでの研究や調査の経験を惜しみなく注ぎ込んだサメ本。
 好きな人が好きなものに情熱を全振りするとこうなるんだ……! という熱量がたまりません。

 沼口さんの知り合いじゃないサメはこの世にいないのでは? と思えるほど、どのサメについても「実際に見て、触って、ときには食べた」エピソードの裏付けがあるので、臨場感と説得力がものすごいことになっています。

 その上、正しく適切な報道のために、サメに関する誤解や偏見を解きたいという思い、フカヒレなどのための乱獲に鳴らされる警鐘、生態観察の重要性など、ジャーナリストとしての背骨がしっかり通っているので、硬派な仕上がりになっています。軟骨魚類なのに。

 この本では、サメ好きな小学生から研究者まで、さまざまなサメ関係者も紹介されているのですが、こんなにサメ人口が多かったのか、というのにもびっくりしました。

おわりに

 昆虫関係の本がないのでは、と思われた方。そのとおりです。
 なぜかというと、うちの子が昆虫大キライなので、今回の選書基準からは外れてしまったのですね……。
 ですが、バッタ博士の本(バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書))を始め、昆虫関連では、子供も読めそうなたくさんの良書があります。
 
 ほかにも、私がまだ気づいていないマンガや本がたくさんあるはず、
 オススメの本がありましたら、ご紹介いただけると嬉しいです!

 Twitter: @pollyanna_y

*1:なお、ガチ科学者の皆さまにおかれては、他人を趣味の沼に引きずり込むにあたっての鉄則「こまかいツッコミは後から小出しに」を心に留めて読んでいただければ。