春、近し

月曜日は、朝10時から研究室の雑誌会がある。
論文を紹介したり、研究内容を話したりするセミナーだ。

今朝、10時ギリギリに、動物門(注・公道に面した塀。というか柵。理学部2号館の動物学専攻側にもっとも近いのでこう呼ぶ。近道)を乗り越えていたら、頭の上で、なつかしい声がした。

ウグイスだ。

まだ、どことなくおどおどした鳴き方だが、よくとおる声で、立派にウグイスである。

うれしくなったので、セミナー前にお茶を入れながら、修士1年のN嬢に話したら、なんと、彼女は1週間前からそのウグイスの声を聞いていたという。

1週間前といえば、まさに修論発表準備で、てんてこまいをしていたころ。
ウグイスに気づかなかったことからも、改めてたいへんだったな、とわかる。

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昨日は、K塾で模試の問題作成会議。
いまだに、高校生がまちがって職員会議にまぎれこんでしまったような、間の悪さを感じる。

それよりなにより。

以前、同じK塾で別のアルバイトをしていたころ、私の上司だった教務のおにいさんが、今は、本部への異動で理科担当になり、下っぱ講師の私の担当でもある。

上司だった人に、「先生」と呼ばれるのは、はなはだしく落ち着きが悪い。
おにいさんも、その度にニヤニヤするので、私もニタニタして頭をかかざるを得ない。
会議の資料のコピーをとってもらうのも、なんとなく気が引けるので、
つい、別の教務の人を探してしまう。

それにしても、受験生のころ講義を受けていた先生に、
「さきほどpollyanna先生がおっしゃったように」などと言われると、
落ちつかないと同時に、ちょっとえらくなった気がしてうれしい。

新任の先生方は、みなさん、こんな思いをしてらっしゃるのだろうか。
いや、もっと肝が据わっているにちがいない。

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本日の細胞

CHO細胞に、どうもふしぎなコンタミが見られるので、先生に聞いたら、細胞が死んだやつではないかとおっしゃる。

でも、それが増えるのはふしぎなので、培養細胞にくわしい隣の研究室のF助手さんに見ていただく。

いいニュースは、それがとても良性で、細胞への毒性がないということ。
悪いニュースは、それがバクテリアのコンタミであることだ。

なんとか上手に抗生物質で除こうと思うが、ショックである。

意気消沈して、別の細胞の世話をしていたら、ふたたびF先生がいらして、
「確実にコンタミを防ぐなら、これを試されたらどうですか」
と、高いフラスコ(ねじふたつきの培養用のびん)を2袋、くださった。

太っ腹だ!

ありがたくいただく。
人の情けが身にしみる、修了まぎわの早春である。