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2021年に読んだ本から

ただいま、ただいま。
こちらのブログもぼちぼち再開しようかと思います。
肩慣らしに、今年読んだ本の中から印象に残ったもののメモまとめ。別のところに書いた内容とかぶる部分もあるかもしれないけど、まとめなのでそこはご容赦。

パンデミックの倫理学

コロナ禍に際して、自分の考え方や判断にわりとふわっと入り込みがちだったり、あるいは無視しがちだった倫理的な諸問題に、筋道立てて向き合うための指針が得られた。
PCR検査に関して特異度99%を想定した議論はちょっと残念。PCR検査をめぐる議論において、なぜ恣意的な数値設定で大衆を「説得」しようとする動きが専門家たちの間で生まれたのか、科学倫理の面から検討するとおもしろそう。

クララとお日さま

こんなに美しくて切ない祈りの物語があるだろうか、と思いつつ、ちょっとガンダムSEEDも思い出しつつ。
心が生まれればそこに祈りは必ず生まれるものなのかもしれない。

蒸気と錬金

世界観とキャラクターがとても好みで楽しく読めた。まだ明らかになっていない謎の設定もありそうなので、続編を書いてもらえると嬉しい。ポーシャに「もうひとり」加わった掛け合い込みの旅と冒険とか絶対楽しいはず。

家は生態系

家の中のさまざまな場所に構築されている、主に微生物を主体とした生態系の話。給湯器(極限環境だ!)にひそむ細菌たちの話「自宅の熱水泉」とかわくわくする。

実力も運のうち 能力主義は正義か?

今年いろんなところで話題になった本。
能力主義の恩恵を少なからず受けて育ち、生きてきた立場から読むと耳も胸も痛いし、これまで受けた恩恵を、もっと世の中に還元すべきだと身の引き締まる思いもした。一方で、こういった反省と思考を突き詰めていくと、結局のところ共産主義に行きついちゃわない? と思ってしまうのは、わたしがまだ共同体主義をちゃんと理解していないからなのだろう。

The Genetic Lottery: Why DNA Matters for Social Equality

邦訳されたらやっぱりタイトルは『遺伝子ガチャ』になるのだろうか。
最新の研究成果によれば、遺伝子が社会的不平等に対して因果効果を有することが示されているとして、社会的不平等の解決には遺伝学の理解が不可欠であると主張する。優生学的イデオロギーに陥らないよう、細心の注意を払って書かれているので、その点は安心して読めるはず。
最後に、反優生学的な科学と政策を目指す行動原理がいくつか提案されているが、若干夢物語気味かもしれない。しかし、これはわたしたちひとりひとりが考え、批判しあい、ブラッシュアップしていかなければならないものだろう。

一度きりの大泉の話

身を切るような独白の悲しみと切なさに、何度も喉が詰まるような思いがした。竹宮惠子先生の『少年の名はジルベール』と併せて読むと、まるで高村光太郎・智恵子夫妻のようではないかと思った。

博論日記

気になっていたけど読めていなかったもの。
分野によっても指導教官によっても違うのだろうが、わたし(実験科学系)が受けた博士課程での教育とはあまりにも違って驚いた。というか主人公のジャンヌは、ほとんど教育らしい教育を受けていないんじゃないかと心配になってしまった。どちらかというと、ひたすら同人誌やコンクールに投稿を繰り返して小説家を目指す生き方の方に近いように見える。

ザリガニの鳴くところ

なんとも分類し難い作品。愛と自然と博物学と切ないミステリ。最後まで読んで、この愛おしい主人公のことを自分は何ひとつ理解していなかったということが痛切に突きつけられてしまう。

王女に捧ぐ身辺調査: ロンドン謎解き結婚相談所

ロンドン謎解き結婚相談所シリーズの二作目。
ちなみに一作目はこちら。

心優しい貴族の金髪未亡人・グウェンと、謎多き過去を持つやんちゃな高学歴ブルネット・アイリスのアラサー女子コンビが、第二次世界大戦直後のロンドンを舞台に大活躍。おもしろくないわけがないバディもの。
二作目は、エリザベス2世とエディンバラ公フィリップが重要な登場人物。ロイヤルカップルのナマモノ二次創作とか、日本ではあり得ないと思うけど、UKでは大丈夫らしい。すごい。

武器を持たないチョウの戦い方

めちゃくちゃエキサイティングだった。
チョウは相手に対する積極的な攻撃手段も持たないのに、なぜオス同士の「縄張り争い」が成立するのか、というシンプルな疑問に対する驚くべき答えが、粘り強く緻密な実験と観察で示される。
本格的に読み始める前にあれこれツッコんでやろうと意気込んでいたのだが(無礼)、ページをめくる度に、そのほとんどがわたしの知識不足か思い込みによるものだったとわかっていくのも痛快だった。論文査読者との実際のやりとりも見てみたい。読み終わると、身近なチョウの行動を観察しに出かけたくなることまちがいなし。
しかし、虫屋さんにはどうしてこう名文家が多いのか。北杜夫とか好きな人は絶対好きだと思う。

自由研究には向かない殺人

爽やか青春ミステリ。思春期特有のやりきれなさ、もどかしさ、かなしさが、謎と一緒にほどけていくような心地よさがある。

らんたん

日本近代の女性運動家総出演といった趣。林真理子や瀬戸内寂聴などによる女性の伝記が好きな人、NHKの朝ドラが好きな人には、こよなくおいしい作品だと思う。

同志少女よ 敵を撃て

今年読んだフィクションの中で、間違いなく一番おもしろかった。劇場版アニメで見てみたい。

裏世界ピクニックシリーズ

アニメがきっかけで読み始めてハマったシリーズ。でこぼこ女子バディもので、しかもそれに怪談やネットロアが絡まり合ってくるとか、大好物以外のなにものでもない。
もともと、巻末の詳細すぎるほど詳細な「参考文献」がおもしろかったけど、最近は主人公の一人である空魚(そらを)ちゃんが、大学で文化人類学に本気で取り組み始めていることもあって、俄然深みが増してきた気がする。
一点、わたし自身は「アルファ・フィメール」系の女性に脅威をおぼえた経験がないので(子供のころのだいぶ早いうちに、他者を支配しようとしてくる系の女性のあしらい方、逃げ方をおぼえた)、そういった面での怖さはあまり身にしみて読めていないかもしれない。