子供を叱る

 JBpressのこの記事

子供を叱る若い母親に言いたい、「お母さん、それは無理です」  JBpress(日本ビジネスプレス)

 に端を発して、子供の叱り方についての話が、ネットで盛り上がっている。

 私はたいして若くはないが、未熟な親であることにはまちがいないので、子供の叱り方は気になる話題だ。

 率直に言って、JBpressの記事はカンに障った。

 とおりすがりのおばちゃんが、そのときだけを見て、「そんな叱り方しちゃ子供がかわいそうじゃないの。うちはこれこれこうしていい子に育ってるんだけど、あなたもそうしなさいよ」と説教している感じというか。

 つまるところ、この記事そのものが、母親に対して「どうしてそんな叱り方をするのよ~」という、よくない叱り方をしている感じになってるんだな。

 いちおう、「母親をとりまく社会の事情があるんだろうけど」と共感を示しているようには見えるけど、結局は母親を否定してるよね、信頼してないよね、ということがひしひしと伝わってきてしまう。

 社会問題とか以前に、子供の性格とかその場の状況とかいろいろあって、親は親でいろいろ悩んだり考えたりした末にそうやってるのかもしれないじゃん? 

 

 とりあえず、とんちんかんな共感を押しつけられるより、「ねちねち陰湿に子供を叱る女は感じ悪い。見たくない」と言われた方がよほどマシだと思った。その方が、「なんだと、コノ~」と喧嘩もしやすいし、「でもまあ、君の言うことも一理ある」とも言いやすい。

 お情けで共感してもらって、寄り添ってもらわなきゃ他人の話が聞けないほど、おちぶれちゃいないぜ。

 んで、「共感」について考えた。

 「お情けで共感してもらって、寄り添ってもらわなきゃ他人の話が聞けないほど、おちぶれちゃいない」は、子供も同じだよね、と。

 よく、子供を叱るときには「まず子供の気持ちを受け止めて、共感して」みたいなことを言われる。ソースはすぐには出てこないけど、子供雑誌についてくる親向け小冊子のコラムとか、そんなところでよく見る気がする。JBpressの記事にもそう書かれている。

 でも、この「まず子供の気持ちを受け止めて」から「叱る(言うことを聞かせる)」ってやり方、むずかしくないか?

 私にとっては、とてつもなくむずかしい。

 どうしても、「うんうん、わかるわかる。○○ちゃんの気持ちもよくわかるよ」と、ワザとらしい猫撫で声になり、「でもね」と掌を返したように否定せざるを得ない。

 この「わかるわかる」のあとの「でもね」が、どうにも卑怯に感じられてしまって、どんな顔していいかわからなくなる。

 子供も「ああ、親が機嫌を取って言うことを聞かせようとしてるな」くらいのことは簡単に見抜くしね。

 相手を従わせるためのテクニカルな共感は、まず私自身が好きになれないし、少なくともわが家の場合は、ほとんど効果がない。

 だから、いろいろじたばた試行錯誤して、悩むことになる。

 どうしてもこちらの言うことを飲み込ませなきゃいけないときがある。

 子供自身や誰かを危険な目にあわせかねない行動、誰かに悲しい思いをさせてしまうような言動、わがまま、お行儀、などなど。約束を守ることも。そして、親の都合も。

 そういうときは、苦肉の策として、「ダメなものはダメ」をまず言う。子供は「なぜか」を納得したがるので、理由も言う。ねちねち言っちゃうこともある。

 あんまりやっちゃいけないんだろうけど、「そんなにあれもこれもイヤなら、ぜんぶ捨てるよ」とかも言う(ごめんなさいごめんなさい)。

 子供は私の言うことをさぞ理不尽だと思うだろう。実際、理不尽なことを押しつけている場合も多々あるだろう。

 だから、せめて子供が私を理不尽だと思う気持ちはそのまま受け止めようと覚悟をして、とりあえずの折り合いをつけてる感じ。

 時間と心にゆとりがあるときは、子供がこちらの言うことを飲み込んだあとに、「ママは絶対に“でもね”って言わない」という約束をして、子供に言いたいことを言ってもらう。

 「ママが○○って言ったのがいやだった」とか「ママのかお(いいかた)がこわかった」とか「でもむすめちゃんはこうしたかった」とか、わりと言いたいことを言ってくれるので、「いや、それにはわけがあってね」と言いたくなるところをがまんして、「そうかそうか、それがいやだったんだね。わかってくれてありがとう」と聞き取って、とりあえずは終わりにする。

 同じことを言わなきゃいけないことはそんなにないので、意外と伝わってるらしいことに救われたりもする。

 いつも同じようにはいかないし、いつもこちらが正しいとは(ぜんぜん)かぎらないし、でもどうにかしなきゃいけないことは、待ったなしでやってくる。

 子供に約束を守らせようとするなら、まず大人が約束を守らなきゃいけないし、子供に生活態度を教えるなら、まず大人が生活態度を正さないといけない。できてませんごめんなさい。

 自分に言い訳をしていると、子供はすぐ見抜くから、良きにつけ悪しきにつけ、腹をくくらないとやっていけない。

 大人ってずうずうしいな、ふてぶてしいな、と思っていたころがあったけど、なるほど、こうやってふてぶてしい大人になるのか、と思ったりもしながら、日々じたばたしている私にとって、おお、同志よ、仲間よ、と励まされる気持ちになった記事がこちら。

子供を叱る若い母親に「お母さん、それは無理です」と言いたいお父さんに言いたい、「無理じゃないです」 - 紙屋研究所

 みんながんばってるんだなあ。