その朝は大雪だった。
大学1年生の冬。まだマジメさの残る学生だった私は、1限目の物理化学を受けに登校した。
閉まっている校舎の外で、何人かの学生と待っていると、先生もいらした。
先生は鬼教官(試験の評価が厳しいこと)で有名だったが、ニコリともせずに進められる授業はとても丁寧で、わかりやすいものだった。
校舎はなかなか開かず、みんなで寒さに足踏みしながら待っていると、「すばらしい科学の発見というものはね」と先生が話し出した。
「すばらしい科学の発見というものは、花火みたいなものだと、ぼくは思う。
その花火を自分の手で打ち上げられれば、これに勝る幸せはないだろう。
しかし、その花火を上げるための手伝いができるだけでも、やはり幸せだ。
そしてね。実は、同じ時代にその花火が上がる瞬間を見られること、それを美しいと思えることも、この上ない幸せなんだと思うよ」
それから今に至るまで、堕落したり、また持ちなおしたり、を繰り返している進歩のない私ではあるけれど、この花火への憧れだけはもち続けていたいと思う。