ママ文化考

朝起きたら、とってもいいお天気!

というわけで、懸案だったベビー服・肌着の水洗いをした。


買った段階で一着ずつ包装されていたので、そのまま着せればいいかなと思っていたのだが、プレママの間では「水通し」なるものをするのが常識らしい。洗剤ナシでざっと洗濯し、肌あたりを良くするのが目的のようだ。ほぅほぅ。

母に聞いてみたところ、「そんなのしなくても平気よ~」とのことで、ま、そうだろうなと私の理性も告げているのだが、可愛いベビー服を見ていたら、無性にいじりたい衝動に駆られてしまった。いーや、洗っちゃえ♪

ずらりと干してみると、新生児の服ってちっちゃいー。思わず目にハートが入ってしまう。うへへ。


さて、この「水通し」情報を仕入れたのは、某「た○ひよ」の出版社が運営している女性専用サイトである。

母体の雑誌をのぞいたことのある方なら、あの独特なノリと言葉遣いをご存じだろう。「新生児ちゃんのお世話 かんぺきマスター☆」みたいなアレである。

クールかつハードを標榜する私としては、「何がパパ♪ママ♪だ。日本人ならお父さん、お母さんだろうが」と、肌が粟立つのを禁じ得ない。禁じ得ないのだが…つい買っちゃうのよね。そんでもって、わりと真剣に読んじゃうのよね~。


このあっぱれな教育効果は、さすが通信添削教育のプロ(進○ゼミの出版社)ならではだ。サイトの掲示板に集まるプレママさんたちも、見事に洗脳された文体で投稿なさる。

このピンク色の世界で飛び交う専門用語は、「ベビ・ベビたん」「うちの姫・王子」。自分の配偶者の呼び名にしても、「夫・ダンナ」は圧倒的に劣勢で、ほとんどが「パパ・旦那様(旦那さん)」である(臆面もなく、配偶者に敬称をつけるようになったのはいつからだ?)。

女からママへの転身の華麗さには、ただただ目を見張るばかりである。


同時に、とてもまじめで向上心のあるママさんたちが多いことに感嘆もする。

とにかくみんな「頑張る」のだ。体重管理を「頑張る」、散歩やヨガを「頑張る」、水通しを「頑張る」、家事を「頑張る」。投稿を読んでいると、自分のいたらなさにどんどん肩身が狭くなってくる。

しかし、すごいなあと思う反面、何か、少しずれている感じに違和感もおぼえるのだ。この違和感は、学生時代やOL時代に“自分磨き”を頑張っていた人たちに感じたものと似ている。


たとえば体重管理。

妊婦は、妊娠前の体格にもよるが、だいたい8~12キロくらい増えるのが妥当とされている。厳しすぎる体重管理が、生まれてくる子どもに悪影響を及ぼすことは周知の事実となっているのに、「増えすぎてる~! どうしよう~! お医者さんに怒られちゃう~!」という投稿の多いこと、多いこと。

安定期でプラス3キロといった、明らかに管理成功している状態でも「どうしよう~」って、イヤミとしか思えない投稿もあったりする。(昔、期末試験前に「ぜんぜん勉強できなかった~」と言いながら、しれっといい点数を取っていた女の子にちがいない)


「お医者さまに怒られる」ことを本気で怖がり、泣いてしまうママさんというのもよく見かける。とにかく「権威者からの評価」「平均に比べて正常か(優れているか)」を気にする投稿が多い。

誤解を恐れずに言おう。こういう「頑張る」方向がずれている女性たちは、私は苦手である。


少し前に、kasokenさんの「女の子」嫌い?で盛り上がったことを思い出した。

私は「女の子要素」の何が苦手か。たぶん、すべてを「女の偏差値」で測る価値観が苦手なのだと思う。その偏差値を上げるためにだけ「頑張る」、そのくせ自分の行動を客観的に判断する目がないことに違和感をおぼえるのだろう(可愛くないなー)。

もちろん自分の中にも“偏差値”に対するコンプレックスはあって、だから余計に「女の子要素」との折り合いをつけるのが難しかったのかもしれない。

結婚と妊娠を経験したことは、私にとっては「もう“偏差値”卒業ですよ」というお墨付きをもらえたような意味もある。そして、逆説的だが、これで初めてのびのび「女の子」を楽しめるようになった気がしている。“偏差値”から解放されてしまえば、「女の子」であることは本当に楽しい。


でも、プレママ掲示板を見る限り、妊娠・出産が、また新しい“偏差値”試験の場になっている女性も多いみたいだ。それが昂じると、“子どもの偏差値=自分の偏差値”という教育ママさんになるわけで…うーん、こわいな~。

この“偏差値”から最後に解放されるのは、生殖年齢を過ぎた頃、どピンクのお洋服で闊歩する「おばさん」になったときなのかもしれない。


なんて、こんなうららかな青空の下、初めての赤ちゃんを迎えようとしている新妻が考えることじゃないですね♪