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きらいなもの

私はまだ目撃していないが、研究所には大量に「出る」らしい。・・・ゴキブリが。


K先輩がにこにこしながらやってきて「ねえ、ゴキブリは平気?」と唐突に聞いた。

私はぶんぶんと頭を横に振って、大嫌いの意を表明。

「なーんだー。昆虫の研究してたっていうから、頼りにしようと思ったのに」

「で、出るんですか?ここ」

「けっこういるのよ~」


Kさんは北海道出身。本州に引っ越してきて、初めて家にゴキブリを発見したときは、怖さのあまり車で一夜を明かしたという逸話の持ち主である(そのときはご主人が留守だったため)。

そんな話をしていたら、別の先輩が身の毛もよだつ話をしはじめた。


「こないださー、ここにキムタオル(実験用の分厚いティッシュペーパーみたいなもの)重ねて置いてたんだよね」

「(嫌な予感)」

「片付けようと思って、何気なくひっくり返したらさ、いたんだよ、裏に。ちっちゃいのがたくさん」

「ぎゃー!!」


恐怖に身悶えていたら、Kさんが怪訝そうに私を見ている。

「なんで他の虫は平気なのに、ゴキブリはダメなの?」

「あれは虫としての心がけがなってないんです。態度が悪い」

「・・・何それ。だって、芋虫とか平気で触れるんでしょ?」

「あれはすべすべして気持ちいいじゃないですか」

「嘘~。全然その違いがわかんないだけど」

「だって私、女の子ですから」

「・・・」


この時点で、先輩方はあきれて向こうに行ってしまったが、ダメなものはダメなのである。

人の家に入り込んで勝手に繁殖するという図々しさに虫酸が走るのだ。

したがって、私は家で窓を開けるときには大変神経質になる。ガンガンと網戸を叩き、隠れているかもしれない奴めをおどかしたつもりになって、さっと開けて外に出、さっと閉める。

今のところ、ありがたいことに目撃してはいない。もし出たら、絶対に新築に引っ越すんだと心に決めているが、研究所は引っ越すわけにいかないもんなー。どうしよう。