安倍新総理の所信表明演説を読んでみた。
原文はこちら。
いろいろ言われているみたいだけど(カタカナが多いとか)、総じて印象は悪くない。
(はじめに)の中の
額に汗して勤勉に働き、家族を愛し、自分の暮らす地域や故郷を良くしたいと思い、日本の未来を信じたいと願っている人々
なんて、素直にいいじゃないですか。
また、(活力に満ちたオープンな経済社会の構築) の中の
新卒一括採用システムの見直しや、パート労働者への社会保険の適用拡大などを進めます。再チャレンジ職場体験制度の創設や団塊世代などベテラン人材の再雇用の促進といった、再び仕事を始めるためのハードルを引き下げる取組も行います
これもぜひ実現していただきたい。
ってか、実行に移さないと、かーちゃん怒るよ。絵に描いた餅じゃダメよ。
ポスドク就職難も、新卒一括採用システムがなくなれば、ある程度は解消されるだろう。ポスドクの企業就職はこよなく狭き門だ。
ポスドクで積んだ経験をビジネスで生かしたい、と思う博士は少なからずいるはずだが、現在ではまず無理。
いちどポスドクになってしまえば、アカデミア以外のキャリアを目指せないというシステムの中、言い方は悪いが、足抜けできずに苦界に骨を埋める女郎さん博士たちがもったいない。
また、社会保険の適用されないポスドクさんも、生活が保障されるようになれば、安心して研究に励むことができる。
けっこうひどい待遇をされているポスドク、多いよ。日本の技術力を担っているのに。
また、ここには触れられていないが、結婚・出産で退職した女性の再雇用も是非、推進してほしい。
これこそ再チャレンジ。
一度退職すると、二度とそれ以前と同レベルの仕事に戻れない、という状況が、女性を「産まない」選択に追い込んでいる一面もあるはずだ。これが「産んだ女性」「産まなかった女性」のいらぬ対立をつくりだしている。
産んだ女性は、仕事をある程度セーブしたことに対して不満と引け目を感じ、産まなかった女性は、子どもをあきらめたことに対して悲しみや引け目を感じる(全員ではない、もちろん)。
産んだか産まないかで、女性が女性を敵視するような世の中はもう結構。
ただし、育児は大仕事なので、それに専念したいという女性が、働かないことに引け目を感じないようにもしてほしい。だって、彼女たちは、働く女性が保育園に預けるところをすべて、自分一人で(とあえて言おう)引き受けているのだから。
中途半端な男女共同参画思想で、どんな女性でも就職しろしろと尻を叩くのはどうかと思う。
家庭の女性たちがしてきた、金を稼ぐこと以外の大切な仕事に光を当て、誇りをもてるような社会になるといい。
以下は細かい突っ込み。
勝ち組、負け組が固定化することへの懸念
って、流動化はするけど、勝ち組・負け組自体は厳然として存在するってことですかい。
その存在を前提として、みんなが勝ち組の座を得るべくチャレンジ(殺到)する、と。微妙にギスギスしてる気も。
また、何度も出てくる「自律」そして「規範」という言葉。
簡単に言ってくれてるけど、難しいと思う。
自律ということが、きちんと他者を配慮した上での自己規範に基づくものであれば、それは重要きわまりない。
しかし、権威から与えられた規範をそのまま受け入れて、それに従って動くように自らを統制することであれば、それは自律でもなんでもない。
これ以降の項目で、しきりに「規律」という言葉が出てくるのがひっかかる。
荒れた高校を建て直す規範として、君が代・日の丸を強制することが必要だ、などとどっかの暴走知事が言い出すような世の中は、ちょっといやだ。
最後。
教育の目的は、志ある国民を育て、品格ある国家、社会をつくることです。
そ、そうだったんですか??
私たちは、国家・社会のために教育を受けてきたのですか?
あくまで、教育は「受ける権利」があるものだという、私の認識はまちがっていたのかしら??
国民の三大義務のうち教育に関するものは「子どもに受けさせる義務」だったはずで、それは、子どもから教育を受ける権利を奪ってはならないということだと思っていたのですが。
私は、教育の目的は、子どもが社会生活を営んでいく上で必要な能力を身につけることだと思っている。知識も情操も体育もふくめ。
あくまで子どものためが第一義で、ほかの誰も、子どもを差し置いた至上の目的になることはない。
(いやま、国にとっちゃ「国家・社会のため」が本音なんだろうけど、ずいぶんあけすけに言ったもんだな、と)
ところで今回、このエントリを書くために、演説をワープロソフトにコピペして、いちいちコメントで突っ込みを入れていたら、なんだか他人の科研費申請書類を手直ししている気分になってしまった・・・orz(←いちど使ってみたかった2ちゃん語)
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