恐るべし、紫外線

幼いころの私は、冬季限定で色白の美少女だった。
人より早く日に焼け、人より早くその色が抜ける。

どうもここ数年、冬になっても、なかなか色が白くならない。
さては、これが「トシ」というやつか? と私は悩んでいた。

ところが、この秋のはじめに、助手のM先生が実験中の私に声をかけた。
「そんなことしてると、ガングロになっちゃうよ」

私はいったい何をしていたか。
DNAを精製していたのである。

さまざまな長さのDNAがいっしょくたになった溶液から、長さ別にDNAを分けたいときは、寒天でつくったゼリーを使う。
(寒天-アガロース-でつくったゲルなので、アガロースゲル、もしくは単にゲルと呼ぶ)

このゲルの片方の端にDNAを乗せ、電圧をかけると、DNAは負の電荷を帯びているから、プラス極に移動することになる。
アガロースはご存じのとおり、繊維の固まりだ。
したがって、大きなDNAほど、この繊維の網の目にひっかかりやすいため、移動するのに時間がかかり、小さなDNAはスイスイとプラス極側へ移動する。

というわけで、DNAを大きさ別に分けることができるのだ。
こんなかんじ。


下側がプラス極なので、下に見えるバンドの方が小さいDNA。

このDNAは、紫外線を当てると光る物質で染めてある。
したがって、上の写真で見て、一番大きなDNAを取り出したいな~と思ったら、ゲルに紫外線を当てたまま、その部分だけを切り出す、という操作をしなくてはいけない。

M先生が私に注意したのは、まさにこの操作をしているときであった。

紫外線はなにかと有害なので、アクリルでできた防護マスクがある。
私は、めんどくさがって、そのマスクをしていなかったのだ。

眼鏡をかけていれば目は保護されるよね~、どーせ一瞬だしいいや~、と思っていた私。

しかし、その一瞬に浴びる紫外線の量は、予想以上に多いと聞き、
(鼻の頭の皮がむけたという人もいた)
以来、きちんとマスクをつけ、手袋をするように心がけた。

すると!

なんと最近、私は色白になってきたのだ。

ちょっと色味の明るいファンデーションを秋口に買っていたのだが、最近、肌との色の差がなくなったのに気づいた。心なしか、ノリもよい。

これは喜ぶべきことだが、昨年ホワイトニング化粧品につぎこんだお金を思うと、やや胸が痛む。
色を白くしようと努力する一方で、ガンガンに紫外線を浴びて、その努力を打ち砕いていたなんて・・・なんておバカな私。