書評『理系なお姉さんは苦手ですか』(著/内田麻理香さん、絵/高世えり子さん)

 内田麻理香さんにご恵贈いただきました。ありがとうございます。

 「理系女性」というステレオタイプからはちょっと(かなり?)外れた、そしてとっても魅力的な女性たちの生き方に、サイエンスライター内田麻理香さんが迫ります。高世えり子さんの素敵なイラストも満載!

 「理系女性のダイバーシティ多様性)を伝えたい!」という麻理香さんの思いから生まれた本だけに、ほんとうにいろんな職業、いろんな生き方を選んだ方たちが紹介されています。

●理系な女性10人の、理系人生カタログ

カタログ01◎加藤牧菜さん

 プロデューサー・コンサルタント

 科学と文化をつなぐプロデューサー

カタログ02◎菊谷詩子さん

 サイエンスイラストレータ

 日本ではまだ珍しい科学絵専門のイラストレータ

カタログ03◎岡野麻衣子さん

 日本科学未来館勤務

 論理的なコミュニケーションで科学を伝える博物館のおねえさん

カタログ04◎本多るみさん

 お花屋コンサルタント

 理系的「なぜなに」思考をお花屋さんの経営に活かす

カタログ05◎本多るみさん

 NHK制作局付NHKエデュケーショナル教育部シニアプロデューサー

 業界の異分子?! 科学教育系テレビ番組のディレクター

カタログ06◎中村あやさん

 女医

 勉強嫌いをパワーに変えた女医

カタログ07◎軽部鈴子(仮名)さん

 高校教師

 教育とSFと理系男子へのやまない愛

カタログ08◎竹村真由子さん

 グラフィックデザイナー

 アートで科学を伝えるデザイナー

カタログ09◎中川登紀子さん

 パーソナルヘアカラー講師

 就職後に見つけた「やりがい」を活かし起業へ

カタログ10◎熊田亜紀子

 東京大学大学院工学系研究科 准教授

 東大工学部電気系初の女性准教授

番外編◎内田麻理香

 サイエンスコミュニケーター

 理系と文系の架け橋を目指すサイエンスコミュニケーター

●理系な女性の、「アンケート」と「これあるある!」

 理系女性アンケート1◎理系女性のイメージは…

 理系女性アンケート2◎理系への進学キッカケは?

 理系女の「これあるある!」パート1◎用語・考え方・実験室

 理系女の「これあるある!」パート2◎仕草・オシャレ・理系女・理系男

 Web連載時から楽しみに読んでいましたが、やっぱりすごくおもしろい!

 理系寄りの世界でずっと生きている人だと、そこそこいろんな理系女性を見慣れていることもあり、「いまさら、あらためて理系女性に注目するって……?」と思うこともあるかも。えーと、連載開始当初は、実はわたしがそう思ってました。ゴメンナサイ。

 でもこの企画のほんとうのねらいは、「理系女性」というカテゴリーの特性を追求することにはなかったんですね、実は。

 むしろ、「理系なお姉さん」というカテゴリーをタイトルに冠しておきながら、「理系」とか「女性」とか、そして「理系女性」とかいう肩書きやレッテルがいかに無意味であるかを、軽やかに暴きだしてみせた本だと言えるでしょう。

 もちろん、「あ、これは“理系あるある”だよね」と思えるエピソードも随所にあるし、女性としてクスっと笑ったり、勇気づけられたりする言葉もたくさん紹介されています。

 でも、それらのどれもが、本書で紹介されている皆さんの、数ある魅力のひとつ(やそれ以上)なんですね。

 そういうエピソードを引き出せたのは、麻理香さんがずっと「人間」を見ようとし続けてきたからなのかもしれません。その姿勢は、別のご著書「恋する天才科学者」にも表れていると思います。

 ここでちょっと個人的なお話をしておくと、麻理香さんとはもうずっと長いおつきあいをさせていただいている友人ですが、ものの見方や考え方はけっこう違うことが多いです。対立することも、ままあります。……「あーもう、なんでそこで、そう地雷を踏みにいっちゃうの!」とか。

(麻理香さんは麻理香さんで、いろいろわたしに対して歯がゆい思いをしていることでしょう)

 それでもなお、わたしが麻理香さんを「すごい!」と思うのは、ときにその情熱が暴走し、しばしば地雷を踏み抜きながら、麻理香さんが、自分の好きなものをしゃにむに追求していっている、その一点に尽きます。麻理香さんが好きなもの、それは、科学と、人間。のはず。

 本書は、麻理香さんが好きなものにとことん向き合った結果、実に魅力的な本になっています。

 あとがきの中に、こんなすてきな一節がありました。

 私は◯◯になりたいから、ここに登場したAさんの通りの人生を真似しよう! といっても、うまくいかないのが難しいところです。理系女性のロールモデル(生き方のお手本)を集めても、なかなか若い人にぴんと来ない理由もそこにあるのではないかと私は思っています。だって、みんなキャラクターも状況も違うのですから。でも、ひとりひとりの一部分を参考にして集めて自分なりに改造すれば、何らかの生きる指針、お守りになることでしょう。この本から「理系女性のロールモデル」を読みとるのではなく、それぞれの人のいいとこ取りをして、かけらをつまみ食いして、自分のモノにしていただけたらな、と願っています。

 本書は、つまみ食いしたくなる「オイシイ」お話が満載の、とびきり豪華な人生カタログになっていると思います。