そのとき私は、フェノールとクロロホルムを1対1に混ぜた試薬をつくろうとしていたのであった。
つつがなく混ぜ終わり、水層と有機層を分離しようとして、遠心分離機にかけた。
5分ののち、チューブを見たら、中身がない。
・・・チューブの底がみごとに抜けていた。
Gが強すぎたんだろう。私のミスである。あーあ。
ローター(遠心分離機の部品)を洗っていたら、P先生が細胞の調子を聞きにみえた。
あたり一面にただようクロロホルムの香気から、何が起こったかは察せられただろう。
昨日に引き続き、いいタイミングで登場する先生だ。
くさった気持ちを引き立てるべく、6月の学会開催地・マレーシアはペナン島のガイドブックを開く。
どこからどう見たって、リゾート地である。
泊まる予定のホテルは、ラサ・サヤン・リゾートホテル・・・一番の老舗、最高級ホテルではないか。
少し機嫌がなおった。
ふと見たページにあった注意事項:
「ビーチボーイとは、節度あるおつきあいをしましょう」
日本男児とだったら、節度を欠いてもいいのかしら。