読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

この夏、子供と見に行ったお芝居2つ

 私が子供のころから親しんでいる繁華街が池袋なのですが、池袋のある豊島区は演劇の街でもあります*1。そんな池袋で、子供向けの楽しいお芝居を2つ見てきましたよ。

子供のためのシェイクスピア 「ロミオとジュリエット」@あうるすぽっと

 
 子供のためのシェイクスピアは、もう20年くらい続いている人気のシリーズです。「子供のための」と言いながら、子供騙しでない、きわめて本格的なシェイクスピアの舞台を見ることができます。

 今回は「ロミオとジュリエット」。少し早めに着席したところ、カンパニーの皆さんによる歌と踊りのサービスがあって、子供はびっくり。大喜びでした。

 舞台はとてもシンプルで、古い学校にあるような木の机と椅子を組み替えることだけによって装置が作られていきます。
 わずか9人の役者さんたちがそれぞれ何役も演じるのがみごとですが、10人目の役者かもしれない操り人形(シェイクスピアそっくり!)もまた、チャーミングな食わせものでした。

 笑劇的要素は現代的で軽妙なやりとりにアレンジされています(「マーキューシオが塩をまーきゅーしお」と言ったダジャレもまじえて)。しかし、悲劇として大切なシーンでは、子供には難しいだろうと思われる言葉でも、美しい言葉がしっかりと使われています。

 決闘シーンも見せ場ですが、迫力ある華麗なアクションで、子供もくぎ付けになっていました。
 
 有名なラストシーンは、ジュリエットがはっきりと自分の胸を刺してその場に倒れ伏す、というものではなく、とても印象的な演出がされていました。

 もう全国ツアーも終わったようなのでネタバレをしてしまいますが、暗い墓の中、操り人形のシェイクスピア(?)に短刀を渡されたジュリエットは、次第に大きくなるトルコ軍隊行進曲に合わせて、舞台奥から差してくる強い光に向かって歩き出すのです。
 その光の中では、ロミオが子供のように嬉しそうに手を振り、飛び跳ねながら、ジュリエットを待っています。
 ジュリエットが歩みを進め、音楽が最高潮に達したとたん、舞台は一気に暗転。もう一度明るくなったときには、ロミオとジュリエットが石像のような姿で向かい合っています。

 死後のジュリエットとロミオに救いを与えたとも見えます。しかし、その救いの光景はまた、死に瀕したジュリエットが見た幻影のようでもあります。たとえ幻影でなかったとしても、そのような救いが現世では得られなかったということは、観客の誰もが知っています。
 救いの光景の楽しさや輝かしさが増すほど、悲劇性が強く感じられるものとなっていると思いました。

「気づかいルーシー」@東京芸術劇場シアターイースト

 もう、誰もむかなくていい。もう、誰もむかれなくていい。万歳、万歳!
Amazon.co.jp: 気づかいルーシー: 松尾スズキ: 本

 松尾スズキさんの絵本「気づかいルーシー」をもとにつくられた音楽劇です。
 
 ルーシーというかわいい少女が、おじいさんと馬と一緒に楽しく暮らしていたのですが、あるとき、馬と出かけたおじいさんは馬から落ちて死んでしまいます(死んでいない)。
 ルーシーが悲しむだろうと思った馬は、おじいさんの皮をむいてかぶり、おじいさんのふりをして家に帰ります。
 ルーシーは、そのおじいさんが馬であることにマッハで気づきます。しかし、馬の気づかいを無駄にしてはいけないと気をつかって、だまされたふりをし続けます。中身だけのおじいさんは、二人に気をつかってその様子を見守ります。そして……?!

 という、とんでもなくヘンテコなストーリーなのですが、そのヘンテコさをよくぞここまで生かして素敵なお芝居にしてくださったものだと思いました。
 どちらかといえば大人向けのテーマとシュールな設定にもかかわらず、子供の好きなもの(ギャグ、かけあい、歌、下ネタ、怖いもの、キモいもの)全部入りという素晴らしさ。

 音楽劇なので、楽しい歌がたくさん出てくるのはもちろん、なんと、舞台上にいろいろな楽器が置いてあって、音楽家さんの田中馨さんと森ゆにさんが、最初から最後まで生演奏してくださるのです。実に贅沢。
 
 そして、どのキャストも、「この方でなければ」というハマりっぷり。

 この上なくルーシーらしいルーシーの岸井ゆきのさんの元気なかわいらしさ。
 ちょっと残念なイケメン王子の栗原類さんの王子っぷり。
 様々な役を演じた上に、最後にあっと驚く役として出てくる川上友里さんと山口航太さんの大活躍。
 いろんなものをかぶったりむいたりかぶったりして文字通り大汗をかきつつ、子供たちの人気を集めた馬の山中崇さん。
 そして、ずっとむかれたままでかわいそうなのに、ダンスでは素晴らしい動きのキレを見せつけたおじいさんの小野寺修二さん。

 客席の子供たちも、もちろん大人も、終始大爆笑していて、実に楽しい舞台でした。
 
 

*1:毎年九月には、「池袋演劇祭」も開催されます。