天の瞳

灰谷健次郎さんが亡くなり、もう続きを読むことのできなくなった「天の瞳」シリーズ。

その最終巻「あすなろ編 II」より。


金や物の損得じゃなくて、どういうたらええかなァ……気持がええという感じの風みたいなもんを、人は、いっぱい受けた方がいいに決まっとる。

自分と他人がばらばらやったら、それは、あまり、もらわれへん。実感や。これ。


けなげという言葉は、自分とたたかっている人にだけ与えられる言葉や。

人間関係は、このけなげさが、つよい絆になって成立するの。

男と女の関係も同じや。

はじめの好きは誰でもいっしょやけど、好きに磨きがかかるのは、はじめの好きを通り越してからや。磨く道具が、けなざさというわけや。

あんたら、そういう恋愛をせなあかんで。


倫太郎たちの中学校はこれからどうなるのか。

シュウちゃんの行き先は?

メダカの学校の授業も楽しみだったし、倫太郎とリエちゃんの淡い恋模様も気になっていたのに。

早すぎる著者の死を悼む。


それでも、これまでの幼年編、少年編、成長編と合わせて、折りに触れ、心の濁りを取り去るために繙くだろうと思う本。

天の瞳―あすなろ編〈2〉 (角川文庫)

天の瞳―あすなろ編〈2〉 (角川文庫)