南方熊楠生誕150周年記念企画展「南方熊楠-100年早かった智の人-」(2017年12月19日(木) ~2018年3月4日(日))- 国立科学博物館
熊楠といえば、とてつもなく博識の博物学者で民俗学者で、そしてそのふるまいも破天荒で、なんだかすごい人。
水木しげるさんの『猫楠』の、あの強烈な「熊あん」のイメージが強い方も多いのではないでしょうか。
とはいえ、どうにもすごすぎて、その全体像をとらえきれないのも熊楠です。
今、上野の国立科学博物館で行われている熊楠展では、彼がどうやってその膨大な「智」を集積し、組み立て、発信していったのか、という点から、熊楠の人生と業績を見直す試みをしています。
熊楠の活動を、今日のサイバー空間における知識の蓄積と情報の処理にたとえて理解しよう、というアプローチがとてもおもしろいと思いました。
熊楠が行なっていたのは
かたっぱしから材料(文献の抜き書きや標本など)を集めてデータベース化する
→データをリンクしてアイディアをまとめていく
→原稿に仕上げる
といった作業だったのではないか、ということを丁寧に見せてくれる展示です。
美しく細かい字で書かれた、圧倒的な量の「抜書」(古今東西の稀覯書から、これはという記述をひたすら書き写していったノート)。
丁寧に作られた大量の植物や菌類の標本、そしてスケッチ。それらをまとめた「図譜」。
この「図譜」について、展示では「自然界からの『抜書』だったのかもしれません」と述べています。現物を目の前にすると、まさにそうだったのだろう、とうなずけます。
そして、おもしろかったのが、熊楠がその膨大な知識をもとに書いた著作「十二支考」の構想メモである「腹稿」の解読でした。
熊楠の頭の中を、少し覗くことができたような気持ちになれます。
ちなみにこの展示では、パネルの内容をまとめた小冊子を無料で配布してくれています。
この小冊子がなんと30ページもあって、素晴らしい内容なのです。
スタッフの方に言うと出してもらえるのですが、私がいた時間に、ほかにもらっている人はいませんでした。なんてもったいない!
これから行かれる方は、ぜひ小冊子の見本をご覧になって(チラシがおいてあるラックに見本があります)、お気に召したらぜひ、勇気を出してスタッフの方にお願いしてみてください。