東京都議会で、塩村文夏議員が女性の妊娠・出産を巡る都の支援体制についての質問をしていた際に、「早く結婚しろよ」「子供もいないのに」などのヤジを受けたそうである。
都議会:セクハラやじ 女性議員に「早く結婚しろ」 - 毎日新聞
複数の議員がこのヤジを聞いていたようで、音喜多駿議員、上田令子議員などが抗議の声を上げている。
しかし、上記毎日新聞の記事によれば、議会運営委員会の吉原修委員長は「聞いていない」とした上で、「(各)会派の中で品位のない発言をしないよう確認すればいいのでは」と述べるにとどまったとのことだ。そして、今現在(2014年6月19日昼)、都議会の議長からも都知事からも何ら声明が出ていない。
問題となっているヤジは、疑いようもなくひどいセクシュアル・ハラスメントであり、人間性への侮辱である。このような発言をした議員は即座に塩村議員に謝罪すべきであるし、このような発言がされるがままの議会運営を許した議長、議運もまた、同様に謝罪すべきであろう。
言うまでもないが、塩村議員の質問は、妊娠・出産に関して悩みを抱く都民の意見を代弁したものである。
つまり、今回の下劣極まりないヤジは、未婚、既婚、子供のあるなしを問わず、妊娠・出産に関して悩みを抱く都民を侮辱するものだ。
都民を代表する議員が集まる場所で、このような発言がなされ、看過されるがままの状態となっていることは、とうてい容認できるものではない。
議長および議運から、速やかな釈明と謝罪がなされることを、一都民として要求したい。
なお、音喜多議員のブログによれば、問題の発言があったとき、一部の議員から笑いが起こり、都知事も笑ったように見えたとのことである。
それが事実だとすれば、このような発言を笑って見過ごしてよいと考えた一部議員や都知事の倫理観を疑わざるを得ない。都議会および都知事の信用にも関わることだから、この点についても迅速な釈明がなされるべきだろう。
今回のニュースに関するインターネット上の反応をざっと見わたすと、男女問わず件の発言を厳しく批判する声が圧倒的に多い。
少し昔であれば、「この程度のヤジに耐えられなくてどうする」「これだから女性は」といった声の勢いが強かったかもしれない。実際、議会内ではそういう雰囲気が優勢なのだろうと推察される。
しかし、最近の民間組織においては、少なくともある程度の数の人が集まる場所で、無邪気に他人を侮辱するような発言をしたり、それに同調したりすることが容認される雰囲気はかなり薄れているように思う。
特にそれなりの規模の組織であれば、セクシュアルハラスメントを初めとする人権侵害については細心の注意が払われているはずだ。
「オトコならわかるよな?」といった目配せとともに差別意識の共有を強要することも、最近は難しくなっているのではないだろうか。
しかし、都議会のコンプライアンス意識は、高まりつつある民間のそれとは相当に乖離しているように見える。
各個人のホンネの部分でまで差別的な考えを持つなとまでは言わないし、言うことはできない。なぜなら、それは内心の自由の範疇にあるからだ。
しかし、その考えをいったん口に出せば、他人を侮辱し、傷つける可能性が必ずある。
今回のヤジを飛ばした議員に対しては、他人がいる場所では、差別的・侮辱的な発言を聞きたくない人がいることに配慮して黙っている、程度のタテマエは守れる大人になってほしいと思う。
また、今回の発言を容認した議員たちには、せめて、このような発言が都民にどう受け止められるかについて即座に予想し、対処しうるだけのリスク意識をもってほしいと思う。