本日、弁理士試験に最終合格しました。
応援してくださった皆さま、ほんとうにありがとうございます。
お客さまのため、産業の発達のために、より一層尽力してまいりますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。
ぶじ合格したことでもあり、以下に口述試験の再現を掲載します。わたしも数々の先輩方の再現を参考にさせていただいたので、この再現が、今後の受験生の方のお役に少しでも立てばと願っています。
口述試験の再現
口述試験5日目・午後
◎特許・実用新案
主査: 男性
副査: 女性
着席と同時に質問開始。
Q:特許無効審判についておうかがいします。
A:よろしくお願いします。
Q:お手元にパネルがあります。それを裏返してご覧ください。
A:はい。
甲の特許権
請求項1 ……の装置
乙が甲の特許を無効にすることについて審判を請求
請求の理由:甲の出願前の公知文献Aに基づく容易想到性(29条2項)
乙の請求には理由がないとする審決
乙が審決取消訴訟を提起
審決取消訴訟において、取消しの判決が確定
Q:(パネルの内容を説明)この状況において、事件はこのあとどうなりますか?
A:審判に差し戻されて、再び審理に係属します。
Q:そうですね。そのあとはどうなりますか?
A:(その後? どうなる? んーと……)判決に拘束されますので、同じ理由、同じ証拠に基いて、乙の請求には理由がないとする審決はされません。
Q:(怪訝な表情)審決はされません? ということはつまり?
A:えーと、甲の特許を無効にすべき旨の審決がされます。(これでいいのか? ほかにもないか?)
Q:はい、そうですね。それでは、甲は、自らの特許が無効とされないために何ができますか?
A:乙の主張に対して反論をすることができます。
Q:ほかには?
A:訂正審判を請求することができます。
Q:審判ですか?
A:失礼しました。訂正の請求をすることができます。
Q:いつまでにできますか?
A:えー……(状況が混乱して頭がぼーっとしてくる)答弁書提出期間内にできます。
Q:本当にそうですか? (副査の先生)状況をもう一度確認しますよ? 今は、判決が確定していますよ?
A:(ち、ちょっと落ち着きたい……)条文を参照してもよろしいでしょうか。
Q:どうぞ。
A:たいへん失礼いたしました。判決の確定の日から1週間以内に申し立てをして、指定された期間内に訂正の請求をすることができます。
Q:そうですね。それでは、甲が特許請求の範囲を減縮する訂正をしましたが、やはり乙の請求には理由があるとの判断がされました。この場合、審判ではどのような扱いとなりますか?
A:審決の予告がされます。
Q:そうですね。審決の予告は、なんのためにされるのですか?
A:従前は訂正審判を請求することができましたが……(と説明しかけて、長くなりそうだと判断)……失礼しました。審決に示される内容を参考にして、適切な訂正の請求をする機会を特許権者に与えるためです。
Q:そうですね。ちなみに、改正前にはどのような問題がありましたか?
A:(どれについて? アレか? アレなのか? うーん、まあいいや、ここで出しちゃえ)審決取消訴訟提起後90日以内に訂正審判の請求をすることができ、それによって事件が審判に差し戻されるということがあったために、事件が裁判所と特許庁の間を往復するというキャッチボール現象が生じるという問題がありました。
(このあたりで1回目のチャイム)
Q:はい、そうですね。それでは、審決の予告の後、甲が再度訂正の請求をして特許請求の範囲の訂正をしたために、乙の請求には理由がないとの審決がされ、それが確定しました。乙は再度、公知文献Aに基づく容易想到性を理由に無効審判の請求ができますか?
A:いいえ、できません。
Q:なぜできないのですか?
A:当事者および参加人には一事不再理効が働きますので、当事者であった乙は、同一の理由および同一の証拠に基いて、無効審判の請求をすることはできないからです。
Q:同一の理由とおっしゃいましたか?
A:いえ、あの、条文を参照してもよろしいでしょうか。
Q:どうぞ。
A:失礼しました。同一の事実および同一の証拠に基いて、請求をすることはできません。
Q:そうですね。それでは、乙以外の者は、同一の事実および同一の証拠に基いて無効審判を請求することはできますか?
A:参加人であったわけでなければできます。
Q:はい、そうですね。以上で特許法の質問を終わります。
A:ありがとうございました。
◎意匠
主査:女性
副査:男性
Q:意匠法は、意匠権についてお聞きします。
A:よろしくお願いいたします。
Q:意匠権の効力は、条文上どのように規定されていますか?
A:意匠権者は業として登録意匠およびこれに類似する意匠を実施する権利を専有する、と規定されています。
Q:はい、そうですね。ほかにありませんか?
A:その意匠権について専用実施権を設定したときは、意匠権者は業として登録意匠およびこれに類似する意匠を実施することができません。
Q:そこのところをもう少し条文どおりに。
A:(言えるはずだけど大事をとっておきたい……)えー、条文を確認してもよろしいでしょうか。
Q:はい、どうぞ。
A:(よし、合ってた)失礼しました。「ただし、その意匠権について専用実施権を設定したときは専用実施権者がその登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する範囲についてはこの限りでない」と規定されています。
Q:そうですね。その「この限りでない」とはどういうことですか?
A:意匠権者が登録意匠及びこれに類似する意匠を実施できないということです。
Q:専用実施権者の立場からいうと?
A:専用実施権者は、設定行為で定めた範囲において、登録意匠及びこれに類似する意匠を実施する権利を専有できるということです。
Q:はい、そうですね。ほかに、意匠権者が登録意匠を実施できない場合はありますか?
A:はい。登録意匠が先願に係る登録意匠またはこれに類似する意匠、特許発明、登録実用新案を利用するものである場合があります。また、登録意匠が先願に係る特許権、実用新案権、商標権、著作権と抵触するものである場合があります。
Q:そうですね。その、「先願に係る……」とおっしゃいましたが、もう少し条文に即していえますか?
A:(26条1項を暗唱する)(が、どうやら「特許出願前」と言っていたらしい)
Q:特許出願前、ですか?
A:失礼しました。特許出願の日、前、です。
Q:はい、そうですね。それでは、意匠権と商標権が抵触するとおっしゃいましたが、具体的にどのような場合でしょうか。
A:えーと、えー(詰まる)、たとえば立体商標が物品の美的外観とも解釈される場合や、
Q:立体商標に限られますか?
A:いいえ、限られません。つまり、物品の形状、模様若しくは色彩、またはこれらの結合が出所表示機能を担う場合などです。
Q:(副査の先生に)いいですかね? (副査の先生)けっこうです。
Q:それでは、意匠権者が登録意匠に類似する意匠を実施できない場合はありますか?
A:はい。(26条2項を暗唱する)(口が疲れてくる)
(このあたりで1回目のチャイム)
Q:はい、そうですね。類似する意匠どうしが抵触するとはどういうことでしょうか?
A:ええと……(混乱してくる)過誤登録による場合ですとか……
Q:あ、まあ、それもそうなんですが、ほら、意匠権特有の性質から何かありませんか?
A:あ、あります! 意匠権の効力は類似範囲に及ぶからです。
Q:はい、そうですね。それでは、意匠権を侵害しているとして警告を受けた場合、代理人として、どのようなことを検討しますか? 意匠法に即してお答えください。
A:はい。まず、原簿を確認して、意匠権が存続しているかどうかを確認します。
Q:原簿とは? 条文の言葉で?
A:登録原簿です。
Q:そうですね。それから?
A:また、対象製品等が登録意匠または登録意匠に類似する意匠の範囲内のものであるかどうかについて検討します。もし、その範囲内に属する場合は、先使用権等の抗弁事由がないかどうか検討します。また、意匠権に無効理由がないかどうかについても検討します。
(このへんで2回目のチャイム)
Q:はい、そうですね。意匠法の問題は以上です。
A:ありがとうございました。
◎商標法
主査:男性
副査:男性
Q:さっそく質問に入りますね。商標法は、商標登録の要件のうち、商標法第3条についてお聞きします。
A:よろしくお願いします。
Q:まず、商標法第3条第1項第3号について、商品についてのものと、役務についてのものを、それぞれ4つずつ挙げてください。
A:はい、えー、商品については、その商品の産地、販売地、効能、用途などです。役務については、その役務の提供の場所、質、えー(テンパる)……条文を確認してよろしいでしょうか。
Q:どうぞ。
A:失礼いたしました。役務の提供の場所、質、効能、用途、などです。
Q:それらについて、3号ではどう規定されていますか?
A:それらを普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標、です。
Q:そうですね。では、3条1項3号に規定されている商標が登録できないのはなぜですか?
A:これらの商標は、何人も使用することを欲し、また、何人も使用する必要があるものなので、一私人に独占を認めるのは適当ではないからです
Q:(大きく頷いて)はい、そうですね。それでは、3条1項3号には、「包装の形状」が規定されていますが、具体的にどのようなものがありますか?
商品「なになに」について、商標「なになに」のように答えてください。
A:(この時点で「包装の」を聞き落としている)えーと、たとえば商品「りんご」について、商標「りんご」……
Q:「包装の形状」ですよ?
A:失礼いたしました。ウィスキーの瓶等です。(主査大きく頷く)ですので、商品「ウィスキー」について、ウィスキーの瓶の形状の商標です。
Q:はい、そうですね。それでは、3条1項6号には何が規定されていますか?
A:(暗唱する)
Q:そうですね。3条1項6号は、1号から5号までとどのような関係にありますか?
A:1号から5号までの総括条項です。
Q:はい、そうですね。では、3条2項は何を規定していますか。
A:(暗唱する)
Q:そうですね。3条1項6号の「何人も」と2項の「何人も」に違いはありますか?
A:(違い? えー? なんだ?)ありま……せ…
Q:ん? ありませんか?
A:いいえ、失礼しました。あります。まず、1項6号の「何人も」は、出所が特定の者であるとまで認識されている必要はなく、一定の出所から流出したものであればよいです。
Q:(主査、副査、大きく頷く)
A:(それに自信を得て)これに対し、2項の「何人も」は出所が特定の者であると認識されているものを含みます。(口が滑った)
Q:含む?
A:あ、そうではありません。特定の者の業務に係る商品又は役務を表示する商標であると認識されている必要があります。つまり、いわゆる著名の程度に至っていることを必要とします。
Q:(笑顔で)はい、そうですね。商標法の問題は以上です。
A:あ、ありがとうございます。(チャイム鳴ってないけどいいのかな? と思いつつ立ち上がる)
Q:(笑顔で)緊張が解けませんでしたか?
A:はい、終始緊張していました(笑顔で)
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再現は以上です。
一発目の特許・実用新案法は緊張MAXでしたが、主査の先生、副査の先生ともに、丁寧に話を聞いてくださったので助かりました。
意匠法の先生方もとても親切で、助け舟もけっこう出していただいたと思います。
商標の先生方はお二人とも終始笑顔だったので、とても話しやすく、びっくりするほど早く終了しました。ただ、最後の「いわゆる著名の程度」という言い方はよくなかったな、と後で思いました。