「研究」を仕事にするか?(その1)

山田ズーニーさんの「おとなの進路教室。」

今月は、「「研究」を仕事にしますか?」というテーマで、私がお話しさせていただきました。


放送最終週にあたり、研究ってなんだろうと思う人、研究を仕事にしようか迷っている人、今まさに研究を仕事にしている人、そして、これ以上研究を続けようか迷っている人へ、エールを送ります。


研究ってなんだろうと思う人(特に中高生の方)へ

あなたがおもしろいと思うことはなんですか? 

文学? 漫画? パソコン? それとも科学?


不思議だな、知りたいな、と思うことを調べて、考えて、確かめて、「こんなことがわかったよ!」とみんなに教えてあげるのが研究です。

何を不思議だと思っても、知りたいと思ってもかまいません。


あなたがおもしろいと思うことや、それに似たようなことをおもしろいと思っている研究者がきっといます。

図書館の本の中にいるかもしれないし、インターネットの中にいるかもしれない。科学が好きなら、サイエンスカフェに行ってみましょう。

そして、研究者たちが、いったいどんな人なのか。何をおもしろいと思って、どうやって調べ、考え、確かめ、そして伝えているか、ちょっとのぞいてみましょう。


研究をしてみたい、と思ったら、その研究のしかたはどこで学べるのか、調べてみましょう。学校や予備校の先生に聞いてみてもいいですね。


研究を仕事にしても、しなくても、「研究とはどんなことか」を知ることができれば、それは必ず、将来の暮らしや仕事を豊かにし、また役にも立ちます。


研究を仕事にしようか迷っている人へ

博士の就職問題(新卒博士の就職率の低さ、ポスドク問題)がここまで大きく喧伝されるようになり、博士課程へ進むことをためらう人も多いかもしれません。


学部で、または修士課程までの間に、少しでも研究というものを自分の手でやってみたなら、それは必ず、どんな仕事にも生きてくる、と私は思います。

自分にはほかに興味のある仕事がある(ありそうだ)。でも、アカデミアのコースから外れたら、ドロップアウトしたような気になる、というのが迷いの原因なら、まずは就職活動をしてみることをお勧めします。


ネットをさまよって情報を集めるのはほどほどに、直接いろいろな仕事をしている人に会って、話してみましょう。

生身の人間は、予想と期待をはるかに超える情報を与えてくれます。もしかすると、その情報は自分がほしいと願ったものではないかもしれません。でも、「予想を裏切られる」経験は、きっとあなたを豊かにします。


いっぽう、やはり世界を相手に研究でやっていきたいとあなたが願うなら、博士号はあった方がいい、と私は思います。

自立した研究者になる方法を学ぶことができるのは、やはり博士課程です。


企業への就職の道が狭くなるかもしれない、という不安はよくわかります。しかし、優秀な企業であれば、「博士は使いづらい」などという視点のみで、博士を敬遠することはありません。その人材が、企業を利益するかどうか、のみで判断するはずです。

ほんとうにそこで働きたい、という気持ちがあなたにあれば、それは必ず伝わります。

あなたの価値、あなたが培ってきたものに自信をもって、それを誰のために、何のために生かすのかを考えてみましょう。


今、企業の採用活動において、博士は買い叩かれている状態です。しかし、優秀な博士が企業で活躍すれば、博士の値段(給料)は、本来の資質に見合ったものになるはずです。

後輩たちのためにも、あなたが動くことは、大きな意味を持ちます。


博士号をとってなお、アカデミアの世界で生きていきたい、と思う場合、よほどじっくり考える必要があります。


(長いので、次回に続く)