最近、ほとんどテレビを見ないのだが(幼児番組すら見ていない)、久しぶりに民放のニュースショーを見て、呆れ果てた。
見た番組は、先週日曜夜の「プレミアA」。
腹が立ったのは、例のギョウザ事件(中国製の冷凍ギョウザに薬物が混入して、日本国内で多数の被害者が出た)の話だ。
中国の工場の生産ラインをスタジオで再現して、どの過程なら薬物が混入できるかを検証し、「犯人像を絞り込む」というもの(犯人、という言葉をはっきりと使っていた)。
工場の従業員の中に犯人がいる、とどうして決めつけることができるのだ?
犯行は、国内の輸送の過程においても、流通センターにおいても、小売店においてもなされうる。
工場の従業員が犯人だという決めつけが、現場で真摯にギョウザを作っていた従業員たちにとって、どれだけ失礼なことかわかっているのか?
この番組をつくった人に聞きたい。
もし、日本製の冷凍ギョウザが、アメリカで同様の事件を起こしたとしよう。
アメリカのニュースショーが、もっともらしく日本の工場の様子をスタジオで再現し、「このラインのどこかに犯人がいたはず」と、三文サスペンス劇場を繰り広げたとしたら、あなたたちは、どのような報道をするのか?
もっと別なたとえでも良い。
もし、日本製の冷凍ギョウザが、日本国内で同様の事件を起こしたとしよう。
あなたたちは、その場合でも、工場の従業員の中に犯人がいる、と名指してショーづくりができるのか?
単細胞なストーリー作りをすることで、いろんなところからくるに違いないクレームと批判の嵐を予想して、おそらくはもっと慎重な仕立てにするだろう。
同胞にならできる配慮が、隣国の国民にはできない。
その想像力のなさ、思い上がり、そして、そんな視点で作られた番組が批判もされずにいることが恐ろしい。
ちなみにこの特集では、真正なものかどうかはなはだ怪しい「実験」もやっていた。
紙粘土でつくったギョウザもどきをビニール袋にパックして、輸送に使われる段ボール箱に詰める。
薬物液を模した色インクを入れた注射器を、段ボール箱の外から何箇所か突き刺して、箱の中にインクを注入する。
段ボール箱を開け、中のギョウザパックを取り出すと、外側にインクがついているもの、注射針で穴が開いて中にインクが浸入したものなど、いろいろなギョウザパックが見つかり、これが実際の薬物汚染プロフィールと類似している、という主張。
・・・あのね。
この「実験結果」そのものが、工場のラインに犯人がいる可能性を否定しているでしょうが。
この「実験」の後に、工場再現ショーをやるとは笑止千万。