この準備(と追い込みの実験)のために、先週一週間はほとんどおうちでご飯をつくらなかった。もうひと実験データを付け加えれば、配布資料の見た目が華やかかなーと思って、初めてのDIGサザンに挑戦・・・したのが、この苦闘の日々のはじまりである。自縄自縛とはこのこと。
しかし、まわりでDIGサザンに成功した人が見あたらない。一からプロトコールをつくるのか。しくしく。
それにしても、なんでこんなに無秩序に試薬が分散しているのだろう。三千里をたずね歩き、足りない試薬を注文するだけで一仕事。微妙にバージョンが違っていたり、冷凍保存のはずの酵素が3年前から4度に眠っていたり、もういなくなった人のサンプルボックスに、一つだけ必要な試薬が紛れていたりするし。
前からいる人たちは、それでも何らかの秩序を把握しているらしい。
失敗した人の事情聴取の結果、「やたらとバックグラウンドが高かった」という証言があったので、ハイブリダイゼーションの条件をちょっときつめにしてみることに。ものすごくどろどろのバッファーができて、若干不安になるが、少々SDSが析出するのもかまわずにプローブを投入。
サンプルをシーソー式に揺らせる恒温器というものがこのラボには存在しないので、大腸菌を培養するバカでかい恒温器にタッパーをしばりつけて、一晩40度でゆるやかに振ってみた。たてノリじゃなくて横ノリだけど、ま、いっか。
その結果、長めのプローブを用いたものはきれいにシグナルが検出された(それでも数十分では発色せず)。150bpそこそこのプローブは、明らかにシグナルが弱い。ランダムプライミングだし、そりゃそうだべ。
でもまあ、系が動くことがわかってよかった。新しい仕事も始めているので、気合いを入れて12ページのレジュメをつくる。
と、こんな思いをしても、誰も「よくやった」などと言ってはくれないのが、社会の掟。それどころか、今週末挙式予定のボスに、さらに働けと巻きを入れられる。新郎無敵。
もちろんがんばることにして(明日から)、今日は定時に上がって美容院へ。帰りにスーパーで杏が並んでいるのを見て、思わず買い込む。杏酒を漬けるんだもーん。
*サザンハイブリダイゼーションとは、わけのわからないDNAの固まりの中から特定の遺伝子を検出する方法。ふつうは、検出したい遺伝子の切れ端をたくさんつくっておいて、放射能をもつ物質で印をつけておく(これを「プローブ」という)。この遺伝子の切れ端は、DNAの中から同じ配列の場所を探し出してくっつくので、放射線のシグナルが出ている場所を探せば、そこに目的の遺伝子があることがわかる。
放射性物質は、もちろん何かと危険だし、特別な施設でよくよく注意して扱わなければならないので、大変めんどうくさい。そこで最近は、放射能をもたない別の物質で印をつける方法が開発されている。最も多く使われているのがDIGという物質。
ところが、DIGを使う方法も善し悪しで、ちょっとした反応条件に敏感だったりして、上手に検出するのはなかなか難しいと言われている(←できたのでちょっと得意げ)。