午後、2号館を出て、ふと傍らの茂みに目をやって驚いた。
1匹のセミが、今、まさに羽化しようとしている。
ちょうど殻の背を割って抜け出ようとしているところだ。
羽はまだ縮んだまま、吻はまっすぐ伸ばしたまま、大きなしめった体をのけぞらせて、ゆっくり脚をもがいている。
ひとりで見るのはもったいないので、その場で研究室に電話した。
Kさん、Iくんに引き続き、Aさんがデジカメを持ってやってきた。
みんなで取り囲んで見守っていると、2号館の廊下の窓から、通りかかったS先生が、にこにこ笑いながらこちらを見ている。
それにしても、こんな真っ昼間、しかも往来で羽化しちゃっていいものだろうか。
私がカラスだったら、迷わず食べているところだ。
少々軽率なんじゃないかと思いつつ、そのなまめかしさを北杜夫が好んだ情景を心ゆくまで観察・・・したかったが、あまりのやぶ蚊の猛攻に悲鳴を上げて、途中で断念。
出先から帰ってくると、すでにセミはいなかった。
ぶじに色づいた羽を伸ばして、思うさま夏を謳歌していてほしい。
明日・あさっては、三崎にある臨海実験所で、院生会のサマーセミナーと称し、遊んでまいります。
この夏、唯一のイベントと言ってもよいでしょう。私も夏を謳歌しようっと。