きのう播いた大腸菌は、ぴちぴちのコロニーを適度な密度で形成し、今日もよき日である。
さて、読書報告。
1・佐藤愛子「血脈」
2・河合隼雄、松居直、柳田邦男「絵本の力」
3・内田春菊「私たちは繁殖している」(イエロー、ピンク)
4・小松雄一郎編訳「新編・ベートーヴェンの手紙」
5・遠藤周作「心の海を探る」
新刊書は1と2のふたつのみ。
3は、最近角川文庫に入ったものを。
4は眠る前に本棚を漁っていたら、ふと目に留まって。
5は昨日、電車移動の前に本郷の本屋で。
『血脈』。これはほんとうにおもしろかった。あの分厚い三冊を、ほとんど一気に読んだ。
人がみな矛盾を抱えて生きているということが、圧倒的な説得力で迫ってくる。
ちょこざいなヒューマニズム、傲慢な正論、知ったふうな分析など、軽くぶっとばすこの勢い。
それにしても、これを読むと、たいていの人は大してヘンな人だとは思えなくなってしまう。
そう、「佐藤家の人々にくらべれば」。
『絵本の力』。とても読みやすい講演および鼎談。
学齢前の私は、福音館書店の「こどものとも」「かがくのとも」、そして「にほんご」で育った。
それらの本を産んだ松居直さんとはどういう方か、はずかしながら知らなかったが、すごい人だ。
小学校三・四年のころ、私は毎日のように教師にぶたれ、蹴られていた悪ガキだった。
その私の心を救ったのが、私をイジメぬいていた教師の絵本のコレクションだったとは、
なんとも皮肉な話。
『私たちは繁殖している』。ご存じ、疾風怒濤の妊産婦ストーリー。
「えいんせっかい」の痛みすら感じなくなるような痛みって・・・どんなよ??
それにしても、日常感じるいろんな不自由が、お産・子育てのときにも、やっぱりつきまとうわけね。
『ベートーヴェンの手紙』。好きな本のひとつ。
『心の海を探る』。おそらく、遠藤氏が『深い河』を書く準備をしていたころの対談集。
「こころ」そのものに直接切り込んでいくやり方は、小説ではなく、対談という形式ならではの魅力。
臨死体験や前世の記憶などについては、今の私はきちんと語るべき言葉をもたないので差し控える。
私は、自分の心の中に広がる深い海を、まだほとんど把握していないに違いない。
自分の心すらつかめないものを、ましてや他人の心がわかろうはずがない。
軽々しく見損なったり、絶望したりするのは傲慢、かつもったいないことだと思った。