時事通信より:
【ワシントン11日時事】
人間の遺伝子数は従来考えられていたよりもはるかに少ない2万6000個から4万個で、
ハエの2倍程度しかないことが10日、明らかになった。
人間の全遺伝情報(ヒトゲノム)解読に取り組んできた米バイオ・ベンチャー企業、
セレラ・ジェノミクス社(メリーランド州)と日米欧などの共同プロジェクト「国際ヒトゲノム計画」
による解読結果から判明したもので、双方は今週発行の科学誌にそれぞれ論文を掲載して、詳細を公表する。
ちなみに、セレラの結果は「サイエンス」誌に、国際チームの結果は「ネイチャー」誌に出るそうで、この棲み分けも、なんとなくおもしろい。
ところで、この「2倍」というのは、多いのだろうか、少ないのだろうか。
最初にこのニュースを聞いたときは、「少な~い!」と驚いた。
もともとは、10万個という予想がなされていたわけだから、当然だ。
ヒトは高等で複雑だから遺伝子もたくさんあるのかと思ったら、実はそんなになかった、びっくり、と思った。
でも、よくよく考えてみたら、単純に「2倍→少ない」と言い切れないような気もしてきた。
まず、高等で複雑なら遺伝子もたくさんある、という予想は、どこから来たんだろう。
(もちろん、遺伝子の数自体は、既知の動物の一定DNA長あたりの遺伝子の数の平均から、ヒトのDNAの長さをもとに、機械的に予測したのだろうが・・・違っていたら教えてください)
ヒトが独自に持っている高次機能のほうが、生きものとして生きていくのに最低限必要な機能よりも、たくさんある。
それって、根拠のない思いこみではないだろうか。
「なんとなくそんな気がする」だけで、絶対的な「数」を予測していた。
飛躍しすぎかもしれないが、そこに、私は思い上がりを感じた。
地球上を見渡せば、生きもののありかたは、目がくらむほど多様だ。
それらの違いを生むのに必要な遺伝子の数は、一見、すさまじく多いような気がする。
でも、今回、どうやらそれほどでもないらしいということがわかった。
相対的に、外には見えない「生命の基本」に必要な機能・遺伝子は、重みから言って、ずっと「多い」ことになるのかもしれない。
「2倍」に戻ろう。
それでも、ヒトの遺伝子は、ハエの2倍ある。
多いか? 少ないか?
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今週のネイチャー
たった今来たネイチャーのメールマガジンによると、今週号のネイチャーは気合いが入っている。
11編の研究論文でゲノム研究の応用例を紹介する上、7編のNews & Viewsで研究の「文脈」を
解説してあるそうな。
そして、今までのゲノム研究の流れがすべてわかるように、なんとCD-ROMつき。
その上、総天然色ポスターつき。
これは買いでしょう、と思ったら、希望者には無料で配るとのこと。
殺到するだろうなあ。
・・・おとなしく買おうっと。届くのを待てない。
日本語サマリーはこちら。
ちょっと追加
わが恩師・石川統先生の「進化の風景」によれば、細菌のゲノムプロジェクトによってわかったことは、
どの微生物でも全タンパク質のおよそ4分の1は、その生物固有のタンパク質である、ということだ。
これは、各生物固有の遺伝子が、それまで考えられていたよりもはるかに多いということを示している。
私の先ほどの記述は、これとは矛盾しているように見えるが、
これは、基本的な生物であると考えられる微生物でも、その多様性は予想以上である、という話
・・・だと私は解釈している・・・違ってたらゴメンナサイ、石川先生。
さっき書きたかったことは、多様性を決める遺伝子の数と、なくてはならない遺伝子の数の重みの考え方についてだったのだけど。
やっぱり、不出来な弟子です。勉強し直します。