霜取り雑感

今週は、研究室の実験用冷凍庫の霜取り週間。

霜取りは、一大事業である。

研究室の構成員は、各自ひとつずつ、冷凍庫の棚をもらい、そこに試薬やサンプルなど、凍結保存すべきものをしまっておく。
したがって、霜取りの際は、自分の棚に入っているものをビニール袋にまとめ、別の冷凍庫に移さなければいけない。
他人の棚に間借りをするわけだから、荷物はコンパクトにまとめる必要がある。
これがたいへんなのだ。

研究室生活も長くなると、試薬やサンプルはどんどん増える。
これは液体を入れる「チューブ」という。

長さ4cmほどのちっちゃい代物であるが、とにかくこいつが増殖する。
水に溶けたさまざまなDNAや、試薬を小分けにしたものなど、今回調べてみたら、200本近くあった。
紙製のラック(紙箱に穴を開けてチューブを立てられるようにした清貧グッズ)に一見、無秩序に並べてあるため(本人だけがその秩序を理解している)、それらをビニール袋に詰めて移動するとなると、バラけてたいへんなことになるおそれがある。そうなったら、元にもどすのは神経衰弱よりたいへんだ。
毎シーズン、霜取りの際に頭を悩ますところである。

しかし!
今年のわが研究室には、若干の金銭的ゆとりがある。
なんと、ふた付きの、しかもプラスチック製のチューブラックが山のように購入されたのだ。

私は嬉々として、チューブの整理に着手した。
・・・が。

きちんと秩序を理解しているつもりだった、それらチューブたちが、実は真に無秩序に存在していることがわかったのだ。
ずっと昔にとったサンプルで、すでに今後の実験には使わないのにとっておいたもの(PCR productとか)。
なぜかあちこちから見つかる、同じ種類の試薬(薄めたプライマーとか)。
番号しか打っていない、身元不明のチューブ(プラスミドとか)。

しばしボーゼンとしていたら、「Yukkoが整理整頓をしている」というのでわらわらと人が見物にやってきた。
・・・せっかく人のいない部屋に持ち込んでやっていたのに。

見せ物ではないぞ、こら、と言っても聞かばこそ。
「なんでこういうもの取っておくかな~」
「そーそー、これが増えるんだよね~」
などと、てんでに勝手なことを言ったあげく、「あ、いいもの持ってるじゃありませんか。いらないんだったらくださいよ」
ほとんどフリーマーケット状態になってしまった。

なんとか整理を終え、すべての試薬とサンプルがシステマティックに収まった。
ビニール袋詰めなど屁のかっぱ。
とても有能な研究者になった気分である。

次は、勉強机の霜取りをせねば。