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自民・民主マニフェスト比較(子育て・教育・医療・科学政策)

 衆院選を前に、自民・民主両党のマニフェストが発表されたので、興味のあるポイントについて比較してみた感想を書きとめておく。

 実施可能要件(財源)については、今後、専門家のご意見を参考にさせていただくとして、ここではあくまで各党が実現しようとしていることが好ましいかどうかを考えてみた。

 参照した書類は、自由民主党・要約版(PDFファイル)、および民主党Manifesto 2009(PDFファイル)を中心に、それぞれの詳細な政策集(自民党の「政策バンク(PDFファイル)」、民主党の「民主党政策集 INDEX2009」)である。

子育て・教育

自民党

 新待機児童ゼロ作戦の推進は応援。放課後児童クラブの量的・質的向上もとてもありがたい。

 低所得者支援策については、ぜひ進めてもらって、「親の因果が子に報い」ないようにしてほしい。

 自民党の政策では、幼児教育費の負担軽減が特色。「3~5歳児に対する幼稚園・保育所等を通じた幼児教育費の負担を段階的に軽減し、3年目から無償化」、というものだ。

 一瞬、0~2歳児を保育所に預けて働く親はどうなるのよ、と思ったけど、よく考えてみると理にかなっている。0~2歳児の公的保育には、とにかくすごくお金がかかる(参考文献:保育コストの現状と規制緩和(PDFファイル);「保育サービス価格に関する研究会」報告書)。0~2歳児を預けて働く親は、すでに多額の援助を受けているからだ。

 「3歳児神話」(子供が3歳になるまでは母親が育てなければよい子に育たないという迷信)の影響を勘ぐることもできるけれど、実際に0~2歳児にかかる手間=人手=人件費を考えれば、いたしかたないのかな、とも思う。

 学校の授業料に関しては、新たな給付型奨学金の創設や、低所得者の授業料無償化を打ち出している。

 しかし、今でもすでに、建前では「低所得者の授業料無償化」のシステムはあることになっているんじゃなかったっけ? ちょっとこのへんがよくわからない。

 女性の再就職支援を打ち出しているが、「就職先が決まらないと子供を預けられない」「預け先が決まらないと就職できない」というパラドックスをどう解消してくれるのか。そこが不安。

民主党

 なんといっても目玉は「月額2万6千円の子ども手当」だろう。これに公立高校の授業料無償化と、私立高校の授業料助成がついてくる。

 大学の奨学金を大幅に拡充することも謳っているが、「各論」を見ると、「希望者全員が受けられる奨学金」としか書かれておらず、給付型であることは明記されていない。この点がやや気になる。

 保育所の待機児童解消について、縦割り行政の見直し・子供に関する施策の一本化はいいなと思う。

 また、生活保護母子加算復活、父子家庭への児童扶養手当の支給等の政策も、好ましい。

 離婚時の養育費支払の履行確保等、母子家庭または父子家庭の子供を応援しようという姿勢が見て取れる。

 「教員の養成課程を6年(修士)とする」、というのが目を引いた。養成と研修をしっかり行うという趣旨のようで好ましく思えるが、現場の先生方のご意見をうかがってみたい。

 よくわからなかったのが、「公立小中学校は保護者、地域住民、学校関係者、教育専門家等が参画する「学校理事会」が運営する」というもの。これでどういういいことがあるのか、今ひとつピンとこない。

<軍配が上がるのは……>

 総じて、これならもうひとりふたり産めるかも、と私が思うのは民主党だ。

 しかし、年金等ほかの政策とのバランスや、実現可能かどうか、そこがどうしても気になる。

医療

自民党

 診療報酬のプラス改定により、医師数の増加や地域医療の再生を進めるとのこと。これらと医療費の抑制は両立しないと思うが、まさかこの期に及んで医療費抑制とか言わないだろうな、というのが不安。

 「政策BANK」にある、「これまでにない思い切った補正予算」がどういうことなのか、具体的に知りたい。ちなみに、私自身は負担増となっても支払う覚悟はある。

 救急や産科、外科などリスクの高い分野を初めとして、お医者さまたちが疲弊しきって逃散が起こっているのは周知の事実だし、それに対する不安はとても大きい。これがどう解消されるのかが、いまひとつ見えてこない。

 また、介護施設の拡充と介護報酬のアップも謳われているが、介護報酬のアップが確実な人材確保や処遇改善につながるのか、よくわからない。「政策BANK」に書かれているのは、「介護職員の処遇改善に努める事業主に対して、職員給料一人あたり月平均1.5万円の引き上げに相当する金額を助成」ということである。

民主党

 Manifesto「各論」の第21項(10ページ)で詳しく述べられている。

 社会保障費削減方針の撤回は妥当だと思う。

 また、介護報酬の改定によって、介護労働者の賃金を月額4万円上昇させることを明記している。

 障害者福祉制度の抜本的見直し(障害者自立支援法の廃止)や、後期高齢者医療制度の廃止にも触れている。

<軍配が上がるのは……>

 素人目には、民主党の方が「医療崩壊をなんとかしよう」という姿勢が強く打ち出されているように見える。

 

科学

自民党

 自民党の科学政策は、経済成長戦略の中に明確に位置づけられている。産業やイノベーションに直接結びつく研究に特化することを打ち出した政策だ。

 その対策として、「世界で活躍する研究者をもっと増やすために、世界トップレベルの研究拠点を約30ヶ所設置や、研究費基金を創設する」とのことだが、詳しい政策BANKを見ても、今までの施策とどう違うのかがわからない。

 これまで与党として政権を担っていた自民党には、日本の科学の現場が青息吐息である現状について、なんらかの反省があるはずだ。「何がよくなるのか」が示されていないので、どうも説得力に欠ける。

 また、息の長い基礎研究の支援策、ポスドク問題、そしてポストポスドク問題として予想される科学分野の人材不足については、まったくビジョンが示されていない。

民主党

 民主党の科学政策も、基本的には技術革新の中に位置づけられている。

 「各論」の第45項(12頁)に、特に環境分野において研究開発・実用化を進めることが謳われている。やはり産業利用、イノベーションに直接結びつく研究を支援する姿勢のようだ。

 基礎研究につながるかもしれない具体策としては、「国立大学法人など公的研究開発法人制度の改善、研究者奨励金制度の創設などにより、大学や研究機関の教育力・研究力を世界トップレベルまで引き上げる」が挙げられている。

 政策INDEXを見てみると、「科学技術人材の育成強化」として挙げられているのは、スーパーサイエンスハイスクールサイエンスキャンプのみ。学生・院生の育成システムやポスドク支援は眼中にないようだ。

 また、同じく政策INDEXの「イノベーションを促す基礎研究成果の実用化環境の整備」の項目を見ると、基礎研究と応用研究がそれぞれどういうものか、そもそもちゃんとわかっているのかな、という不安も生まれる。

<軍配が上がるのは……>

 正直に言って、どちらも似たりよったりで悩ましい。ここでは引き分けとしておく。

 なお、科学政策に関しては、NPOサイコムさん・sivadさんらが公開質問状をまとめ、各党に送ってくださっている。日本の科学政策に関する問題点についてもわかりやすくまとまっているので、ぜひこちらこちらなどをご覧いただきたい。

 誠意と説得力ある回答を出してくれるのはどこの党なのか、非常に楽しみにしている。

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《追記》

 今回、非常に魅力的な科学政策を打ち出しているのは共産党である。→こちら

 

《追記2》

 民主党から回答が来たようです。

公開質問状に対する民主党からの回答 - 科学政策ニュースクリップ

《追記3》

 共産党からも回答が来ました。

公開質問状に対する日本共産党の回答 - 科学政策ニュースクリップ