スピリチュアルワールド見聞記

植木不等式さんの新刊!拝読。


植木不等式氏が、酔って階段から転げ落ち、なんと意識不明の重体に!

植木氏の魂を手に入れようと、その枕元に萌えキャラの天使がおとずれる。

サイエンスライターでありながらスピリチュアルにも心惹かれる植木氏の心残りは、「死後の霊魂があるか否か」という問題に決着をつけること。

ガチガチの科学主義・懐疑主義の天使(!)は、スピリチュアルに対する植木氏の未練を断ち切るべく、離脱した植木氏の幽体とともに、スピリチュアルと科学の歴史を俯瞰する旅に出る。


とまあ、なんとも魂の抜けそうな設定ですが、エンターテインメントとしても、そして哲学書としても、たいへん充実した作品。

しかも、伝統的なサイエンスライティングのスタイルである「対話」形式が採用されており、植木氏と天使さんのスピード感あふれる漫才に引き込まれて、一気に読み進めてしまいました。


というかですね。

この気の強い、バリバリにスケプティックな、死神だか天使だかわからない天使さんが、めっちゃめっちゃ魅力的なんですよ~。

そしてですね。

主人公の植木氏が、サイエンスにもスピリチュアルにも魅力を感じながら、でもやはり科学的にものを考えてしまう、ちょっと気弱な中年男性である、という設定がまた絶妙。


植木氏と天使さんはまず、幽体離脱について科学的な検証を加えようという試みを次々に眺め、近代スピリチュアリズムの歴史を学び、やがて、科学技術とスピリチュアルのふしぎな縁を見いだすに至ります。


科学とスピリチュアルとは、奇妙な“共存”をきっと果てしなく続けていく・・・・・・でもね、ホーホー卿のような口調でひとことイヤミを言わせてもらえば、科学技術のもたらしている果実をナニも考えずに享受するのと、スピリチュアルな主張をステキに思ってやっぱり深く考えずに受け入れるのと、その態度は遠くから見るといっしょ。そう思わない?


そして、スピリチュアルと意味について考える二人。

スピリチュアルな行いそのものの価値を認めてもいいじゃないか、と主張する植木氏に対して、天使さんが示した例とその解釈には、胸が詰まりました。


キリスト教・仏教・神道における霊魂のとらえ方についても、それぞれの宗教家の夢枕に植木氏が立つ、という形での対話で紹介されています。

植木氏の駄洒落も相変わらず快調ですが、個人的ベストワンは、「懐疑は踊る、されど進まず」でしょうか(笑)


さてさて、二人の旅路の行方はいかに? 植木氏の運命は?


続きは本書でのお楽しみ☆