昨夜は,ネルロ・サンティ指揮の「未完成」「運命」を聴きに奏楽堂。イタリア人だから,というわけでもないだろうが,いちばんよかったのは序曲のように演奏されたヴェルディの「ジャンヌ・ダルク」。勇ましくて,かわいらしくて,華やかだった。また「運命」がタップダンスを踊っているような交響曲第5番も,悩みがなくてよかった。歌があるんだなあ。


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独立行政法人化問題,科学技術白書に記された「日本の生き残り」への不安など,大学のあり方についての議論が喧しい。

しかし,ほんとうに憂慮すべきことは,この国における科学および哲学の地位の低さではないか。“役にも立たないこと”を愚直に考え続ける人々への畏敬の念は地に落ちた。


役に立つ,役に立つと言うが,いったい何をもって“役に立つ”と人は言うのか。より物質的に満たされた生活を送るための技術? 否。

人は,「善く生きること」の探求をやめることはできない。それと同じように,わたしたちが「どこから来てどこへ行くのか」の探求も。


生物学が哲学である限り,わたしはこの学問を続けるだろう。また,哲学の要求に応えられるような生物学をこそ築き上げたいと願う。