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なつかしい小公女にひさしぶりに会った。

新潮文庫の訳は伊藤整。美しい完訳で再会したサアラ・クルウは,前に思っていたよりも強く,勝ち気であった。決してただのおとなしい天使なんかではない。

引き取ってやるのだから私の親切に礼を言いなさい,というミンチン女史に,サアラは礼など言わなかったばかりか,こう言ってのけた。

「先生はしんせつでなんかありません。しんせつでもありませんし,ここは家でもありません。」


7歳のサアラはこうも語る。


「ものごとってひとりでにおこるものね。わたしには,いいことばかりいろいろとおこったのよ。わたしが本や勉強が好きだということも,読んだものをおぼえるということも,ひとりでにそうなったのよ。(中略)きっとほんとうは,わたしはいじわるなのかもしれないわ。でも,ほしいと思うものはなんでももらえるし,だれもがしんせつにしてくれるのだから,いじわるなんか,してはいられなくなるでしょう。いったい」と言って,サアラはまじめな顔をし,

 「わたしがいい子なのか,悪い子なのか,どうしてもはっきりしないの。きっとわたしはひどい子なのよ。だけど,一度もつらいめにあわなかったから,それがだれにもわからないのだわ。」

 「ラヴィニアは一度もつらいめにあわないけど」とアーメンガアドが,ぼんやりと言った。「あの人あんなにいじがわるいわ。」

 サアラはそのことを考えながら,いつものくせで鼻のあたまをこすっていた。そしてとうとう,こんなことを言った。

 「そう,それはね,きっと----きっとラヴィニアがおとなになってきたからよ。」


小公女
小公女
posted with 簡単リンクくん at 2006.10.14
バーネット〔著〕 / 伊藤 整訳
新潮社 (2004.12)
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