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昨日は帰りに「戦場のピアニスト」。


感動してというよりは、恐ろしくて涙が出た。共感するにはあまりにも悲惨さが大きすぎる。必死に生き延びるピアニストの恐怖と苦しみ、悲しみは、甘く浸れるようなものでは到底なかった。

彼を助けたドイツ将校が逆に捕虜となって、やがて収容所で命を落とすという悲劇的な運命も、もうひとつの主題にみえる。しかし、銃や戦車やガス室で簡単に殺されていった大量の人々がひとりずつ、このようなエピソードを背負っていたはずなのだ。

 

全編を流れるショパンはほんとうに美しかった。しかし、それよりも耳にいつまでも残っているさまざまな音がある。

ゲシュタポから身を隠すために、赤ん坊の口を塞いで窒息死させてしまった若い母親が嘆く「Why did I do it?」のリフレイン。

ナチスの将校が、ユダヤ人をひとりずつ銃で指しながら呼び出していく「du , du,...」の声。

伏せた頭の上で撃鉄をはずすカチリという音。

撃ち殺された人だけが残るゲットーに戻ったシュピルマンを包む蠅の羽音。


ドイツ将校に見つかり、「お前は何だ?」と聞かれたときのシュピルマンの答え。「Ich bin...」と言い、「Ich war, 」と過去形に言い換えて、「ein Pianist.」とつぶやいた。私なら、あの状況でなんと答えることができるだろう。

戦場のピアニスト [DVD]

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