人がいない・スチームの通っていない研究室というのは、ばかばかしく寒いものです。


一台しかないストーブを勉強机の方に近づけておくと、実験するベンチ側が冷え込んでしまう。

ピペットマンをもつ手が、次第にかじかんでいきます。


それでも貴重なサンプルに過ちがあってはいけません。

感覚のなくなっていく指をお湯であたためあたため、慎重に実験を進めます。

できあがったサンプルを、よその部屋にある機械にかけるべく、

これまた笑っちゃうくらい寒い廊下を、肩をすくめて走っていると、

「これが、21世紀に最先端の生命科学をやっている姿だろうか?」という疑問が頭をかすめるのです。


こんな寒い思いをして実験をしているのだから、いいデータが出ないと承知しないよッ、と、

誰に言うでもなくつぶやきつつ、今日はもう、帰るのでした。


ああ、暖かい家に、家族と温かい食べ物があるって、なんて幸せなんでしょう。

東京は晴れていますが、全国的に大雪のようです。みなさま、どうぞぬくぬくとおやすみください。