科学と生活のイーハトーヴ

Seeking for Ihatov – Utopia – of Science and Life

共働き夫婦が支え合うべきこと

| 9 Comments

はてな匿名ダイアリーのこの投稿が、はてなブックマークで話題になっている。

とある夫婦の離婚序章



この匿名氏は、週三日は会社泊まり、という激務の中、家事育児についてこれだけの貢献をしているのに、「もうあなたとはやっていけない」と奥さんに言い渡されてしまったそうだ。

・土日の食事は100%作成してる

・平日の嫁と娘の食事の「ストック」を土日で仕込む

・嫁の土日外出時は、娘の面倒見る

・土日は娘を風呂入れる。

・平日の家事が回らないって言うから、家政婦雇う。



ワーキングマザーである私は、匿名氏の奥さんにわりと肩入れしつつ読んでいた。



すると、関連エントリーが続々と。私が共感したり、なるほどー、と思ったのはこのあたり。

(あ、ちなみに「増田」というのは、はてな用語で、匿名ダイアリーにエントリを書いた人のことです。「anonymous diary=アノニマス ダイアリー=マスダ=増田」)

増田は奥さんの心境が全然わかっていない

家事協力してるとか言うけど

とある子持ちプログラマーの経験談 – 飽きたら消すよ。

20090115105207



で、最初の投稿に戻るけど、匿名氏は、週三日会社泊まり、という激務の中、ものすごくよくやっていると思う(「食事のストック作成」というのは、正直言ってあまり平日の家事の助けにはならないと思うけど)。

家事放棄、育児放棄、という奥さんの言い分はかなりひどい。この点、匿名氏に同情する。これ以上どうしろと言うんだーー!! という気分に、匿名氏がなったとしてもおかしくない。



ただ、奥さんがここまで言うってことは、もう煮詰まって、どうしようもないところまで来てるんだろうなあ、とも想像できる。



だって、考えてもみてほしい。

今ですら大変だと言っているのに、離婚してシングルマザーになったら、もっと大変になるのはわかりきっている。

次の夫候補が既にいるなら別だけど、そうじゃないのに、とにかく別れたいっていうなら、育児はともかく「家事の分担」が原因じゃないことは明らか。

奥さんは、自分がこれまで訴えてきた本当の問題を解決してくれない、匿名氏そのものに絶望しているんじゃないだろうか。



自分の経験と、身のまわりを見た感じだけで推測するけど、日常生活を回していくことなら、たとえ働いていても、保育園があれば、母親ひとりでなんとでもなる。

(大変だけど)

研究者夫婦なんかに多いが、夫は単身赴任、妻は子供を抱えて仕事、なんてカップルもよくいる。

(大変だけど)

でも、夫というパートナーが同じ屋根の下に暮らしているのだったら、そりゃ支えてほしいと思うのが人情でしょう。



問題は、「どこを」支えるか、が夫婦の間で食い違うことじゃないだろうか。



これも、自分の経験と、身のまわりを見た印象からだけで乱暴に推測するけど、働く母親がいちばん支えてほしいことって、「心」だと思う。



特に子供が一人目で小さいうちは、ものすごくたくさんの不安といらだちと気遣いに振り回されて、神経をすり減らしているだろう。

子供が少し鼻をぐすぐす言わせていたら、いつ保育園から呼び出しがあってもいいように、仕事の段取りをつけ、根回しをして、頭を下げておく。

定時になったら、どんなにやりたい仕事があっても保育園へダッシュする。

子供はやっぱりかわいいし、しつけ面の問題もあるので、帰宅後は全力で向き合う。

どうしても仕事したいときは、パートナーに頭を下げて、仕事させてもらう。



いちばん大変なのは、常に他人(子供、パートナー)のペースに合わせて生活していること、なんだと思う。

実は、それも慣れればたいしたことはないんだけど、小さなストレスは降り積もっていくので、ふとした拍子に、「うわーー!」ってなるときがある。

そういうときに、パートナーがその気持ちを受け止めてくれるだけで、母親は、また元気を取り戻して、がんばれるんじゃないだろうか。少なくとも、私はそれで救われてきた。そして、これはワーキングマザーだけではないだろうとも思う。



たぶん、引用元エントリの匿名氏が思っている以上に、奥さんは、いろんなことを我慢しているし、匿名氏のペースに合わせて、匿名氏の仕事を支えているよ。

匿名氏は、いったん家の玄関を出たら、保育園の呼び出しの電話を気にすることなく、仕事に没頭できるだろう。好きなだけ残業ができるだろう。

でも、それは、奥さんが代わりに仕事中も子供のことを気にかけて、残業を諦めてくれているから、なんだよね。

奥さんが娘さんを残していなくなってしまったら、匿名氏は生活を変えざるをえないはずだ。変えなくて済んでいるのは、奥さんのおかげなんじゃないのかな。

奥さんは、そこを認めて、感謝してほしいんじゃないのかな。



繰り返すけど、「家事」くらいだったら、母親ひとりだってどうにでもなる。

帰宅時間や起床時間の不規則なパートナーをあてにするより、自分のペースで「今日はこれとこれの洗濯、明日はこれ、週末は大物の洗濯と靴洗いと掃除」のように段取りをつけて動いた方が楽。

きっちり時間で動いてくれる家政婦さんにお願いすることもできる。



匿名氏の奥さんは、家事のように自分だけでもできる、または家族以外の他人でも代替がきくような作業を「分担」してほしいんじゃなくて、匿名氏にしかできない役割(夫として奥さんを精神的に支える、父親として子供と向かい合う)をもっとしてほしいんじゃないのかな。



夫婦は背中合わせで敵と戦っているようなものだ、という表現をどこかで読んだけど、見ている景色がまったく違うのはさびしいものだ。

たとえ背中合わせでも、「おい、そっちは大丈夫か?」「うん、ありがとう、大丈夫。そっちは?」みたいな思いやりのやりとりがあればいいのだけど、それすらもなく、互いに別々の方向を向いている・・・そりゃ、夫婦としての将来に疑問ももつよな。



匿名氏が勝手に考えて決めた「協力」を一方的に奥さんに与えて、「これだけ自分は頑張っているんだから、文句を言わず、笑顔で応援しろ」、というのは、やはりちょっとひどいと言わざるを得ない。



でも、奥さんも、ほんとうに自分がやってほしいことを、正確に匿名氏に伝えなければいけない。

「家事が回らない」「育児が大変」って言ってるけど、ほんとはただ、匿名氏に帰ってきてほしいだけなんじゃないのかな。

でも、仕事が正念場である匿名氏に遠慮して、遠回しな言い方になっちゃってるんじゃないのかな。

匿名氏が懸命にやってくれたことに対して、的外れだと怒るばかりで、感謝を怠っていたんじゃないのかな。(←この点、私も大いに反省すべきなのですが)

子供が小さいと、なかなか夫婦のコミュニケーションが取りづらいけど、うまく意志の疎通ができるといいですね。



ついでに。



この匿名氏ご夫婦は、夫婦それぞれの年収がほぼ同等のようだ。(しかも奥さんは残業なしで、週三日徹夜ありの匿名氏と同じだから、「いい仕事」なのだろう)

失礼ながら、そこから妄想をたくましくしたのだけど、匿名氏は、かなり古い性役割にとらわれていたりしないだろうか。



妻ひとりでも家族を養えるだけの収入がある場合、夫たる男性は、「家族を養うために働く」という伝統的な男性役割を完全に捨て去って、自分が仕事をする意味と、家庭における自分の役割を考え直すことを要求される。



早い話、「ご主人に十分な収入があるのに、どうして子供を預けてまで奥さんが働くの?」という、昔(今もか)のワーキングマザーを苦しめた質問を、そっくりそのまま自分に向け直す必要がある。

「奥さんに十分な収入があるのに、どうして旦那さんは遅くまで大変な仕事をしているの?」



古い価値観に縛られた男性が、「自分は仕事をしてもしなくてもよい」「妻に養われる存在であってもよい」ということを認めるのは、ものすごくつらい作業であろうと思う。

十分な年収のある妻の仕事に、さして重きを置いていない匿名氏の書きぶりを見るかぎり、匿名氏もこの手の「古い」男性に思えてならない。

「自分が働かなければ妻と子供は暮らしていけない」と思い込むことが匿名氏のプライドなのだとしたら、そのプライドを捨てて、新しい価値観を手に入れるまでは、自尊心を失った状態で、さぞや苦しいだろう。

匿名氏の奥さんは、その状態に配慮して、匿名氏の苦しみに寄り添う必要があるかもしれない。

9 Comments

  1. 在米、1児の父です。性役割の話ですが、匿名氏については情報が少ないので判断を保留するとしても、日本に時々帰ると「子育て=母親」という観念がとても強いと感じます。個人レベルでは昔に比べて父親の出番は増えていると思うんですが、雑誌、TV、日常生活から目に入る情報の多くが「子育て=母親」なんですね。私はジェンダー論とか良く知らないし、例えば「教科書のイラストが性役割の固定を云々」みたいな話を聞いても全くぴんとこなかったのですが、平日昼間から公園で父親が子供を遊ばせてるのが普通な環境に慣れてしまうと、日本で感じる「子育て=母親」の結びつきの強さはむしろ感覚的に滑稽なくらいです。(例えば、TVで「お父さんのためのおむつ替え講座」みたいなのをやっているのを見て、とてもおもしろい(funny)と思ったんですね。)

    別に現代米国社会万歳というのではなく、こっちで昼間に子連れの父親が母親と同じくらいの頻度で見られるのは「雇用が不安定なので性別関係なく仕事を取れた方が稼がないとやってけない」という世知辛い面も大きいわけですが。役割のフレキシビリティという点についてだけは、余分な固定観念が無い方が社会全体としてハッピーなんじゃないかな、と思います。

  2. ってごめんなさい、ちょっと早合点してました。可能なら上のコメント、消してしまってください。

  3. この関係の記事を元記事のトラバツリー含めてあらかた読んだのですが、そもそも増田は能力的に家庭を支えるだけの労働力を提供できないワーキングプアなんじゃないのかと想像してしまいました。十分に家にいられるような生活に改めると当然稼ぎが減るのだと思いますが、そうなるとさすがに生活苦しくなるんじゃないかと。家政婦が雇えるにしろ共働きで家計を支えているのでしょうし。
    下のトラバ元一番上の記事のブックマークで、id:BUNTEN氏が
    「一連読んでて思うのは、きちんと子育ての負担を負える環境にいる男って日本にどれくらいいるのか。高所得層にはいるのかもしれないが、下層ではほぼ無理(どころか結婚できない)じゃないのかという疑念が拭えない。」
    とおっしゃっていました。割とそういうことを考えてしまってひどく暗澹たる気分です。暗澹すぎて日本語も変ですが。
    ぼくも稼ぎの点で、家庭を持つどころか人的交流も半ばあきらめております。

  4. いわゆる事実婚状態で、食事づくりと家計の始末はわたしの分担の男性ですが、ふとときどき、自分は父子家庭の父ではないだろうかと思うときがあります。(事実婚の妻が娘という意味で。)
    この話題の女性は求めることが多く、与えることが少ない人なのではないでしょうか。家事を分担していて、その役目を果たさないとか、心の支えを下さいとか。
    一人の人間として立って居るもの同士が共同生活しているのが夫婦ではないでしょうか。心の支えを相互に過度に求めるのはブラックホールに入れという終末状態を招くと思います。

  5. ぶくま字数不足補足。
    下層の問題は経済的制約のみにあらず。

    発想が往々にしてマッチョなので、家事を理由に仕事を切り上げさせてくれなどと言おうものなら"男の風上にも置けない女々しい奴"という筋の言葉を投げられる。(本気で抵抗すると、それが可能な仕事に変えろ=辞めろと言われるが、広い世の中にそんな仕事があっても自分がそこに就職することは100%不可能なので結局抵抗できない。)

    ついでに、女性の勤務先側の発想も往々にしてマッチョなので、男の方が収入が少なかったりすると、そんな情けない男とは別れろという感じの圧力がかかるようだ。

    こんな条件が周りにある場合、増田でなくても仕事変えて「協力」するよりは家政婦雇ってでも家庭を維持したい、という発想に傾くだろう。男だってなんとかしたいが、「偏見」は上流人の想像を絶する程度には強く、そういう社会では"マッチョ金持ち男>女性>貧乏男"というカーストが成立するのだった。(涙)

  6. 匿名氏の男性優位的な考え方丸出しのエントリに思わず笑ってしまった。

    嫁さんって、笑顔で応援してくれるもんじゃないのかなあ。>

    そもそも奥さんが、笑顔で迎えたら、この男は育児をするんでしょうか。
    奥さんは家事・子育て・そして仕事を負担しているわけで、だんなの面倒を見るという余計な育児(笑)まで担わされたらたまったもんじゃありません。

    「残業するオレをもっと褒めて」と思っているんでしょうけど、彼は子育てをする奥さんに「いつもありがとう」ぐらいの言葉をかけてあげたことなんかあるんでしょうかね?

  7. 男の人は、結婚すると心理的には妻の子供みたいになってしまうそうです。
    どうせなら「身の回りの世話を任せっきりなのに自覚のない中高生みたいな子供」ではなくて
    「お母さん大好きで、甘えたい子供」になってみたら、奥さんの心もほぐれるんじゃないかなあ
    うちはそんな感じです(共働きじゃないけども

  8. 夜遅くまで働いて、
    子育てにも参加できず、
    そうして稼いだお金が
    ベビーシッター代に消えていく
    ってのが、なんだか悲しいなあ…
    って思いました

    ベビーシッターさんの方が
    起きている子どもと過ごす時間が多い
    なんて悲しいですよね

  9. どこの家庭も初めての育児だと問題にぶつかるのでしょうね。
    うちの体験談を書いてみました。よろしければ読んでください。
    どこをさ支え合うかは、お互いが家事・育児を丸一日交代してみれば身をもってわかるんじゃないかというエントリです。
    > [育児][Life] 夫婦が支え合うためには、共感がベースにないといけないと思う
    > http://oldtype.sumibi.org/show-page/kiyoka.2009_01_17

コメントを残す

Required fields are marked *.

*